[番外編]Fortune Cookie

5/34

100人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
 掃除もひと段落したので、おせち料理の材料を調達しにスーパーに出かけることにした。  12月に入ってから、週末ちょこちょこと進めていたお陰で、大掃除はさっきの窓拭きで完了していた。晃平が『一人で掃除させるのは申し訳ないから』と言って、不要になった家具やゴミなどの廃棄はあたしの代わりにやってくれた。  今朝10時に、先々週インテリアショップで買った大き目の木製ラックがやってきた。  前に使っていたアルミ製のラックは、晃平が学生時代から使っていたものだった。ごくシンプルなデザインで頑丈だったので、特に買い換える必要もなかったのだけど、花を飾りたいと言い出したあたしに、なぜか晃平は『じゃあラック買い換えよう』と言い返してきたのだった。確かに、花を飾る棚にしては、素っ気ない感じもしたけど。  <そうだ、スーパーの帰りに花屋にも寄ろっと>  財布と家の鍵しか入っていないトートバッグを振って歩きながらそんなことを考えていると、自然と鼻歌が口から漏れた。長旅に疲れて帰ってきた時、花が部屋にあると何か違うかもしれない。  一人でいる時間を寂しいと思うより、彼が帰ってきた時、ホッとさせられるような空間を作って待っていたい。  自分の家がここでよかったと、帰ってきた時に感じて欲しい。  そんな場所を作ることがあたしの役目だと思う。  <…だから>  だから、ここから一番遠い場所で少しでもあたしのことを思っていて。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加