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「『門』を抜けるまで3、2、1――」
再び、ミクリさんのアナウンス。いよいよだ。いよいよ魔法の世界に到着する。どんなところなんだろう。虹の橋とかあるのかな。やっぱり空飛ぶ箒がたくさん飛んでいるのだろうか。緑ヶ丘は夜だったけれど、あっちは昼だったりして。いろいろな想像が夢踊る。タケノコの中から早く出口に出ないかとそわそわしながら外を覗く。
「――ゼロッ! さて、魔法界コルレガリア王国、防衛都市パラディシアに到着―― っ!! 何?!」
ミクリさんのアナウンスが途切れるのと同時にタケノコの馬車が大きく揺れる。宮地くんが咄嗟に星のスティックを構えるも既に手遅れだった。瞬きと同時にタケノコの外装が崩れ始めていた。まるで糸がほどけるように、周りからするりするりと――
「何ボーっとしてるんだ! ほら、早く手を掴め!」
宮地くんがいつの間にか大きくなった星のスティックに跨って、私の方に手を伸ばしている。そうか、ここは空の上。このまま馬車が無くなってしまったら落ちてしまう。
急いで手を伸ばして、彼の手を掴む。いや、掴もうとした。掴もうとしたけれど、結局掴んだのは空っぽ。あとちょっとが届かなかった。
「「あっ」」
そう二人声を漏らしたときにはもう遅い。もうタケノコの馬車は跡形もなく、私と他の荷物は真下に向かって真っ逆さま。宮地くんが急いで私の方に飛んでくるけれど、落ちる私を助けようとしたらきっと宮地くんもただじゃすまない。ああ、魔法の世界の空も緑ヶ丘と変わらないな。私はあきらめて目を閉じた。星が静かに瞬いてる。手を胸に当てて、宮地くんの無事を祈った。どうか、宮地くんだけは助かりますように。まるで私の祈りが届いたかのように、瞼のもっと遠くで、何かが光ったような気がした。
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