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~鐘の青年に笑われる~
二人の子供が部屋を出て行ったのを確認して、後ろから彼に近づく。彼は既に私に気が付いているようで、こちらを見ずに私に声をかけた。
「全く似てないね。君と、あの子。見た目はともかく、性格も、魔力も。何一つとして一致しない」
魔力か。確か彼の空色の瞳はその人に宿る魔力を見通すのだとか。そうか、そこから私と菜穂は違うのか。
私は何も答えず、彼の隣に立つと、目の前の皿に盛ってあった寿司マシュマロを手でつかんで口に放り投げた。うーん、マグロとマシュマロ……変な味。
「あなたとあの子は結構似てるね」
もう一つ、今度はサーモンの寿司マシュマロを食べながらそう言ってみる。遠目で見ただけだからそんなによくわからなかったけど。
「俺とリンが? それは初めて言われたな。どの辺が?」
どの辺が、と言われてもなぁ。さらにもう一つ寿司マシュマロに手を伸ばすと、隣からぬっと手が伸びて、彼がそれを口に放り投げた。仕方なく、隣のフライドバナナをつまんで食べた。あ、と思いついて吞み込んでから彼に言った。
「素直じゃないところとか?」
どうだ、としたり顔で見ると、彼は数秒フリーズしたのち、突然腹を抱えて噴き出すように笑いだした。珍しい。
「あはは! 素直じゃない、か。君がそれをねぇ…… 君こそ、素直に妹さんに顔くらい出せばいいのに」
「仕方ないでしょ。…… わかってるくせに」
菜穂は夢にも思わないだろう。留学に行ったはずの姉がまさか魔法界でフリーランスの魔女として働いているなんて。
クスクス笑っている彼を後目に、フライドバナナをもう一度つまんでやってきた方向に体を向き直す。去り際に一言、「それじゃまた明日」とだけ伝えて、部屋を出た。
母似の金色の髪を指に絡めてくるくると手遊び。妹の髪や瞳の色は父似。似てないと言われて当然だ。似てないから、私と妹が違うから、こうやって家族みんなが困っているのだ。
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