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スタッフが話し出す
「昨日から他のお客様方もこの子を見ていましたが
どの方の時も反応は無くケージの隅で小さくなっていました、それにそのぬいぐるみは私達スタッフにさえも触らせてくれないんです
それなのに、この子はお客様だけに
ぬいぐるみを差し出している
私も今まで半信半疑だったのですが本当に
この子は生まれ変わりなのかもしれないですね」
私は家内に
「この子をうちに連れて帰ろう」
と問いかけた。嫁さんも
「そうね・・・・・・でも・・・・・・」
嫁さんも金額を見て躊躇しているようだ。
「大丈夫・・・何とかなるさ、僕も張り合いが増えて
更に仕事が頑張れそうだよ」
「貴方がそう言うのであれば、そうしましょう」
嫁さんの顔にも笑顔が戻った。
私はすかさずスタッフさんに
「この子を買い取りますので、よろしく
お願いします」
と告げた。
「わかりました、ありがとうございます、
それでは、少々お待ちください」
そう私たちに告げて奥に消えていった。
少ししてスタッフさんが戻ってきて
別室に通されていろいろ説明を受けた。
一連の手続きを終えて、晴れてあの子とご対面
もちろん緑のワニさんも一緒に・・・
小さな箱に入れられて私の手の中に・・・・・・
愛犬が帰ってきたような気がした。
私は箱の蓋を開けた。すると私の顔を見て
一声「キューン」とないた。
あの時と同じだ!車の中であの子の最後の哭き声!
「父さんありがとう」か「もっと生きていたい」
と言ったのか私にはわからなかったが
今この子が哭いた「キューン」の意味が私には
はっきりわかった。
「ただいま」
と言ったのだ。
その顔を見て、その声を聴いて、
私の目から涙が溢れ出した。
人目も気にせず、私も家内も涙声になって
2人同時に
「お帰り」
と言っていた。
家内も私と同じことを思ったに違いない。
スタッフさんも私たちにつられて涙ぐんでいた。
「よかったね、ちびちゃん」
スタッフさんの言葉に応えるように子犬は
大きな声で
「ワンワン」
と2回吠えた。
私は子犬を両手で優しく抱きかかえ箱から出して
胸に抱き締めた。子犬は私の首筋に顔をうずめ
じっとしていた。
家内が
「母さんのところにもおいで」
と言うと子犬は家内の両手の中に自分から
飛び込んでいった。
あれ程顔を舐められるのを嫌がっていた家内も
されるがままになっていた。
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