1人が本棚に入れています
本棚に追加
目が覚めたら独りだった。
ここには生き物もなく、建物もなく、ただ一面の荒れた地面だけがあった。
僕は歩いた。
果てしない何もない地面をひたすら歩いた。
歩けど歩けど荒れた地面が広がっていた。
それでもこの先に何かがあると信じて歩き続けた。
歩き抜いた先に深い、とても深い一人分の溝があった。
溝は星を横断していた。
底は深く暗く何も見えなかった。
僕は溝に落ちた。
果てしない何もない空間をひたすら落ちた。
どこに着くとも知れずに、どこに向かうとも知れずに。
ずっとずっと深くまで落ち続けた。
気が付くと底にたどり着いていた。
横たわる身体を起こし、周りを見た。
すると、一つのドアがあった。
そのドアには鍵が掛かっていた。
だけど、ドアの内側には誰かがいる気がした。
「すみません、誰かいますか?」
僕はドアを叩き、向こう側に呼び掛けた。
ガチャリと赤が青に変わり、扉が開いた。
中から最愛の人が出てきた。
僕はその人を抱き締めた。
どこにいたのか、何をしていたのか尋ねたが何も答えは返って来なかった。
その人は抜け殻だった。
それでも構わなかった。
最愛の人をずっとずっと抱き締めた。
何もない何も見えないこの星の底で。
最初のコメントを投稿しよう!