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『ま、しょうがないわね。とりあえず今日はもう終わりましょう』
『そうっスね。俺も疲れたし』
四体の霊は世加がベッドの上で静かに眠り続けていることを確認したのち、寝室をあとにした。
まだ電気がついたままのリビングに戻り、再びソファに座る。これから朝まで何もすることがない幽霊たちは、退屈しのぎにしりとりを始めた。
『じゃあ、真逆さんから時計周りにしましょう。しりとりの、りからね』
しりとりの順番は真逆、膝下、首無し、片手に決まった。
『わかりました。しりとりのり。輪廻転生』
『い、か。んー、じゃあ、生き霊』
『う。討ち死に』
『え……あ? に……虹!』
『地獄』
『首吊り自殺』
『つ……追悼』
『う……か。って、そうじゃなくて! ストップストップ! 何このテンション低いしりとり!』
片手がしりとりを中断させると、三体からブーイングの嵐が巻き起こる。
『あら、しりとりにテンションなんか関係ないわよ』
『そうですよ、片手くん。せっかくいい感じだったのに』
『どこが!? こんなん朝までやってられるか! 俺が虹っていう可愛い単語入れたのに気づかなかったっスか!?』
『虹が可愛い単語とは気づかなかったわ』
『そこじゃねえわ!』
『何が不満なのよ』
『不満ってかさ、死を連想させる言葉はやめましょうよ。もっとこう、なんていうか……』
『わかりました。それじゃあ、片手くんのうからもう一度始めましょう』
仕切り直しと言わんばかりに片手は可愛いと思う単語を考え始めた。
『う……う、じゃあ、瓜!』
『り……じゃあ食べ物繋がりで、りんご!』
『ご……ゴーレム』
片足がそう言うと、急に他の三体が黙り込んだ。
『……膝下ちゃん、ゴーレムって何ですか?』
『泥人形の化け物よ』
『あなたよくそんなの知ってるわね』
『世加様が見てたアニメに出てたの』
『あー、あの人よくアニメ見るものね』
『そういえば、この前は夜中まで主人公が吸血鬼のアニメ見ていらっしゃいましたね』
霊たちは一旦しりとりを忘れて、最近世加が見ているテレビについて話しはじた。
『今の時代ってすごいわよね。あんな薄い壁みたいなものに、あんな綺麗な映像が出るんだから』
『そうですね。私もはじめて見たときは驚きましたわ』
『真逆さんが生きてたときってテレビあったんスか?』
『ありませんでしたね。本当に素晴らしい技術だと思います』
『死んでからこんな素敵なものに出会えるとは思わなかったわよね』
真逆と首無しがうんうんと頷きながら、スマホやパソコン、音楽プレイヤーなどにも感動したと話す。
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