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「この子たちも、いつも通りさ」
この丸いプラスチックの皿の中には、ユカワくんが培養したバクテリアがすんでいる。皿の中に浮いている、緑色の小さなシミがそれだ。
五年生に上がってすぐの頃、このシミを顕微鏡で見せてもらったことがある。そこでは緑色の小さな糸のような物体がからまりあい、重なり合って、一つの固まりになっていたんだ。これを微生物のコロニーと言うらしい。
「シアノバクテリア。地球上で初めて光合成を始めた細菌類だよ」
まるで自分の子供を自慢するように力のこもるユカワくんの声を、どこか遠くに聞きながら、ぼくはすっかりこの小さな世界の住人たちのとりこなっていた。
ぼくに見られているのに気付いているのかいないのか。光に照らされたガラスの中をゆらゆらただよって、さも当たり前のように生きている。だけど彼らの生きる世界は人間の社会とはちがう。それどころか、野生動物たちのすむ世界ともまるっきりちがう。
彼らには脳もなければ内臓もない。考えることもなければ、はたらく必要もない。たまに動物の体の中に入って悪さをする奴もいれば、お医者さんが新しい薬を作るのを手伝ってくれる奴もいる。
そういう、ごく小さな世界のおきてに従って生きているんだ。
顕微鏡の二つのレンズからその世界をのぞくことが、なんだかすごいことのように思えて、頭がくらくらする。遠い宇宙の果てをのぞき込んでいるような気分だ
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