第二話

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 「ほら、真ん中のがキャサリン、ちょっとお転婆。右の端っこにいるのがゴロジローで、あ、今流れてきたのがセルゲーヴィチ・・・」  右目でレンズの片っぽを覗きながら、ユカワくんが説明をする。  ウソかホントか、彼はこのバクテリアたちひとつひとつを見分けられるらしい。愛情込めて名前を付けているのが本格的だ。ネーミングセンスには問題があるけれど。    「よしよし、みんないい子だぞ・・・」   ケミをなでる時すら出したことのない猫なで声で、緑色のシミの表面を、指でなでるユカワくん。眼鏡のおくの瞳がとろりと垂れる。  正直ちょっと引いた。   「それ、さわって平気なの?」  「愛は種族を越えるのさ。体の大きさなんて些細なことだよ」  質問の答えにまるでなっていない。完全に自分の世界に入ってしまっている。  「ところでユカワくん、例のことはもう考えてある?」  こうなるとらちが明かないので、ぼくの方から話を切り出した。  「宇宙なんて、そんなもの一体どうやって作るのさ?」  「ああ、心配ご無用、きちんと考えてあるよ」
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