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② ※R-18 暴力、無理矢理表現あり
俺を連れて来た男が一礼して出て行き、その場には身なりのいい男と俺だけが残された。
突然、何の予告もなく『圧』が広がり空気が変わった。湧き上がる焦燥感。
今まで何故安心していられたのか分からないくらい不安で不安で堪らなくなった。それなのに俺は目の前の男に縋りたいと思ってしまうのだから、どこまでもバカだった。
「――きみ、可愛いね」「痛い事も怖い事も何もないんだよ」「こっちへおいで?」「名前は何ていうの?」「まぁ別にいいか」と、笑顔で次々と話しかけられるが男の目が笑っていない事に気づき、やっと俺は自分が今とても危険な状況下にあり、目の前の男がその元凶なのだと分かった。
この男はダメだ。近づいてはいけない、逃げなくては――。本能が激しく警鐘を鳴らす。
男から視線を外す事なく後ろ手でガチャガチャとドアノブを回そうとするが動かない、鍵を閉められてしまったようだ。
焦り過ぎた俺は更なる失態を重ねる。いつの間にか俺は男に背を向けていて、ドアを開ける事だけに集中してしまっていたのだ。
すぐ傍で声がして、背後には座っていたはずの男と――どこに隠れていたのか他に四,五人の男たちがいた。多分みんなαで――――。
後退る俺の腕を誰かが掴み、それが合図になったのか突然男たちは豹変した――――。
*****
「んぐっ」
「コレはとーっても高価で特別な物なんだ。誰にでもじゃない、きみだからあげるんだよ? 上手に飲めたら褒めてあげるからごっくんしてみよっか?」
優しく諭すような口ぶりとは違って、ニヤニヤと笑いながら何かの錠剤を口の中に入れられ変な匂いのする赤い液体と一緒に無理矢理飲まされた。「いい子」とするりと頭を撫でる男の手が気持ち悪い。
すぐに身体の奥が疼き始め、先週終わったばかりのヒートが再び始まるのだと分かった。さっき無理矢理飲まされた物は発情促進剤の類なのだろう。
あれよという間に男たちに押さえつけられ、乱暴に服を脱がされていく。その刺激にすら甘い声を上げそうになり、きゅっと唇を噛んだ。
涙で滲む視界で男たちを睨みながら思う。
何度も逃げる機会ならあったのに疑う事もせず自分からついて行って――、今回ばかりは自分の迂闊さに嫌気がさした。
αに身体をいいようにされて項を噛まれてしまったら終わりなのに、『番』は俺に残された最後のチャンス、だったのに――――。
俺の首には項を守る為のネックガードはない。必死に項を守りながら力の入らない足をばたつかせて抵抗したけど、俺の抵抗なんて男たちにとってはそよ風のようなものなのだろう、難なく両手両足は押さえられあちこちから伸びた手が無遠慮に俺の身体を弄ろうとする。
顔の前に突然突き出された自分以外で初めて見る男のモノに吐き気を覚えた。赤黒く、どくどくと脈打つソレはもはやモンスターにしか見えない。そんなのがいくつも眼前に迫ってくる。
思わず顔を背けるとおもしろがってソレで頬を打たれ、ぴたぴたぺちぺちという嫌な音と感触に全身に鳥肌が立った。
だけどそれだけで終わりはしない、男たちは俺の髪を掴み顔を固定すると無理矢理口を開けさせソレを口の中に乱暴に突っ込んだ。
思いっきり喉の奥を突かれ、その刺激に嘔吐き胃の中の物といっしょに吐いてしまい何度も殴られた。
男たちの行為に心がどんどん冷たく凍っていくのに、薬によって引き起こされたヒートはいつもより進行が早く、思考も理性もぐずぐずに溶けてしまいそうに熱くて――。
少しでも気を抜けばΩの本能に支配され、目の前の男たちに身を委ねてしまいそうになるのだ。
だけど皮肉な事にひっきりなしに受ける暴力が俺を繋ぎとめてくれていた。耐えがたい痛みで自我を保っていられたのだ。
抵抗しながらも結局は力によってねじ伏せられて苦痛に歪む俺の顔に男たちは興奮しているのか、瞳をギラつかせながら自らの手で扱いたモノから飛び出た白濁で俺の身体を汚した。
立ち込めた青臭い匂いに思わず息を止めたが長くは続かない。
少しでも気にくわないと男たちに暴力を振るわれ曖昧になっていく意識の中、俺は『変態ヤロー!!』と心の中で何度も悪態を吐く事で自分を保とうとしていた。
『助けて』なんて思わない、あの箱の中で助けを求めた小さな声は誰の耳にも届く事はなかったのだ。誰も俺の事なんて助けてはくれない事は分かっていた。
あちこち痛むし気持ち悪いのにヒートは進んで身体の熱は高まるばかりで、心と身体の温度差に悔しくて涙が溢れた。
心が折れるより先に痛みで身体が動かなくなり無抵抗のまま脚を広げられ、何かが秘所に触れた。
それでも諦めたくなくて、ちゃんと声になっていたのか分からないが俺は必死に何かを叫んでいた。
そんな事をしても何ひとつ状況は変わる事なく、もうダメだと覚悟した時ドアを蹴破られるものすごい音と誰かの声を聴いた。
「何してるっ!!」
――――――――え…………、助けに来てくれた……の?
俺に群がっていた男たちはどんどん剥がされていき、声の主が男たちを放り投げていく。
助けに来てくれた事が嬉しくてお礼を言わなきゃと思うのに、度重なる暴力にもう声を出す事も身体を動かす事もできなくなっていた。
その上ヒートが進み、発情が止まらない。
ぶわりと濃いフェロモンが辺りに広がり焦る。
折角助けてもらったのにこれではこの男に迷惑をかけてしまう――、そう思った瞬間男は「ぐっ」と呻き、俺に覆い被さると「すまない」という言葉とともに俺の項を噛んだ――。
そこまで思い出し、意識が弾けた。
曖昧だった記憶が少しずつクリアーになっていく。
――――あれが美幸? 俺を助け、犯し――た?
確かに項を噛んだのは美幸だった。
俺は殴られたり色々と辱めは受けたけど、誰にも最後まではされていない……はず? 美幸にも――――あれ?
俺と美幸は番って――――いない……?
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