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 突然の声に驚き、ギクリとなる。  人が……いた!?  誰――??  声だけで怖くてこわくて俺は自分の身体を両手でぎゅっと抱きしめていた。  できるだけ息を殺し、ゆっくりと声の主を見た。  声の主はいつからそこにいたのかベッドの傍で跪き、俺の事を見つめていた。  かろうじて見えた男の姿が暗闇に目が段々と慣れたのか、はっきりと浮かび上がっていく。  声からいっても俺よりも年上だろう大人の男だった。  こいつが……っ!? と恐怖と怒りとではくはくと声にならない息が漏れる。  男はというとへにょりと眉尻を下げ俺の顔をまっすぐに見つめていて、俺は少しだけ違和感を覚え眉を顰めた。男の表情がまるで俺の事を心底心配しているように見えたからだ。  あんな事をしておいて、今更心配?  ――だけど、と思う。記憶している奴らの中にこいつはいなかった……?  どういう事だ? こいつは番ではない?  拾い集めた欠片の中にひとつだけ、そう言えばと思う。  もしかして――助けてくれた……? あぁでも……じゃあこの項の噛み跡は?  この男が助けてくれたとして、間に合わなかった?  俺が混乱していると、男は遠慮がちに声をかけてきた。 「お兄ちゃん、身体はもう大丈夫……?」  お兄ちゃん? 聞き間違いでなかったら、さっきもそう呼んでいたな。  きょろきょろと注意深く辺りを窺うが、この部屋には俺と目の前の男以外誰もいないようだった。俺たち以外の気配が全くない。  ――――俺の事? 「お兄ちゃんって……」  男は身体に似合わず幼い仕草で首を傾けた。  よくよく見ると大きなクマのぬいぐるみを抱いていて、それが余計に大きな大人の男を子どもっぽく見せていた。 「だって僕お兄ちゃんのお名前知らないから……。僕はね一宮 美幸(いちのみや みゆき)だよ。十歳なの。お兄ちゃんは?」  は?  どう見ても十歳だなんておかしい。二十代後半か……もっとか、どちらにしろ十七である俺よりも大分年上に見えた。  男の言動の意味がいまいち分からないままだったけど、いつの間にか全身の震えは収まっていた。
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