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「――ただ、いま」  正確に言えばここが俺の居場所だとはまだ実感はない。だけど、俺は美幸の番で、美幸の傍が俺の居場所だと言ってくれたから……だから「ただいま」で合ってるはずだ。  さっき美幸の母親から贈られた首輪を美幸が見たら何て言うのか、似合ってる――綺麗だと褒めてくれるだろうか? そんな甘い感情に戸惑いながらもいつまでも慣れない甘さや柔らかさに頬が少しだけ赤くなる。  だけど、いつもならすぐにどーんと勢いよく抱き着いて来る美幸が来ない。  不思議に思って美幸を見ると、眉間に皺を寄せあの写真のような顔をしていて――本能的に怖いと感じた。今すぐ逃げ出してしまいたいのに足が震えて動けない。 「――――み……美幸?」  声が震えているのが自分でも分かったけど、どうする事もできなかった。  怖いのだ。  どうしようもなく怖いのだ。  震える俺を見て、美幸の纏った圧のような物はすぐに拡散していつもの子どもの美幸に戻ってホッとした。  美幸はバツの悪そうな顔をして俺の追求から逃れるように、抱きしめていたお気に入りのクマのぬいぐるみに顔を埋めた。  このクマのぬいぐるみは何故か兎のような赤い瞳をしていた。  少しくたびれた感じから、美幸が本当に子どもの頃から大事にしていた物だと分かる。 「――僕……ちょっと眠くなっちゃった……」  そう言う美幸の声はぬいぐるみに吸収されて、震えていた事に俺は気づけなかった。
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