ホワイトムスクの缶詰

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私は無言のまま、窓の外を見た。 眼下には大きなスーパーが見えて、近くには駅もある。 私は何処かのリゾート地の高級なホテルのスイートルームなんかを想像していたのだが、全く違う。 これなら自宅に居る方が良い気がしてきた。 「私は隣の部屋に居ますので…」 上杉さんはそそくさと部屋を出て行った。 部屋のドアが閉まり、静かな空間だけが広がる。 広がると言う程広い部屋でも無い。 私は手に持ったノートパソコンを狭い机に置いて、とりあえずバスルームを開けた。 ユニットバス。 トイレと狭いお風呂。 部屋にはダブルベッドしか無い。 大きなスーパーの屋上が見えるが、他に行きたいと思う様な所も無い。
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