ホワイトムスクの缶詰

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缶詰に期待した私は、狭い部屋で項垂れるしかなかった。 もっと売れている先生なら、良い場所の良い部屋なのかもしれないが、私程度ならば、ごく普通のビジネスホテルなのだろう。 まあ、幸い部屋が綺麗なのは救われたかもしれない。 いつも上杉さんの会社が使っているホテルなのだろう。 普通にルームキーを二枚準備してあり、一枚は壁に差し込まないと部屋の電源が供給されない仕組みになっている。 もう一枚は上杉さんが持って行った。 上杉さんはこの部屋に自由に出入り出来るという訳だ。 そして私は監禁状態。 業界用語の「缶詰」と言う言葉は二つの意味があると上杉さんは言っていた。 一つは文字通り、閉じ込めて自由を奪い、仕事の効率を上げさせるという意味。 もう一つは時間の無い時に缶詰を食べるって事から時間が無い事を理由に閉じ込めて仕事をさせるって所から来ているらしい。
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