ホワイトムスクの缶詰

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とりあえず私は諦めて、ノートパソコンの電源を繋ぎ、立ち上げる。 ポケットのタバコを出すと机の上に置き、備え付けの足元にあった小さな冷蔵庫を開ける。 中は空っぽで、電源さえも入ってなかった。 冷蔵庫のドアに、申し訳程度に電源を入れてお使い下さいと書いてあった。 私は電源を探してスイッチを入れた。 スイッチを入れたは良いが、飲み物の類も一切ない。 病み上がりでまだ喉がイガイガする私に飲み物は必須だった。 私はポケットの財布を確認し、ロビーまで飲み物を買いに行こうと部屋を出た。 ドアを開けるとほぼ同時に隣の部屋のドアが開き、上杉さんが顔を出した。 「どちらへ…」 静かに上杉さんが訊く。 「いや、飲み物が無かったので、ロビー迄買いに行こうかと…」 私は悪い事をしている子供の様にタジタジになった。 「必要なモノはどうしろと言いましたかね…」 上杉さんは腕を組んで私を見る。 「確か、電話しろと…」
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