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「色に関わる仕事に向いている」と言われるが
五感に優れ、「感覚の牡牛座」とも呼ばれる牡牛座。占星術にしろ、それ以外にしろ、生年月日で見てもらうと私の場合は「色に関わる仕事に向いている」と言われがち。でも私が色について真剣に考えるようになったのは、実は二十歳を超えてからのこと。
姉の結婚披露宴が近づいたある日。振袖をレンタルするため、私は式場の衣裳部屋にいた。用意された四枚をこれから試着し、一枚を選ばなければならない。
色はそれぞれ、赤、青、緑、それと金というか黄緑というか……のグラデーションというかなんというか……な色合いの、とにかく一言では言い表せないものだった。
赤、青、緑の順に袖を通してみるが、これがなんともまあ、似合わない。式場衣装部の女性も、うーん、と首をかしげている。しかし最後の「一言では言い表せない」一枚を着たとたん、私を含め、その場にいた全員の表情が明るくなった。すっごい、似合ってる。びっくりした。
「これが似合う方、初めて見ました」
衣装部のお姉さんも興奮気味。
私も自分にこういう色が似合うって初めて知った。
これがきっかけで、私はこの金だか黄緑だか「一言では言い表せない」色が好きになったし、意識するようにもなった。
*
姉が「自分に似合う色」を診断してくれるサイトをいくつか教えてくれたのは、それからしばらくしてのこと。早速診断してみると、私に似合う色は「春系」と「和の中間色」ということが判明。
「春系」はその名のとおり、春を思わせる色。淡く明るいものから、土のような茶系など。「和の中間色」とは、赤、青、黄といったはっきりした色ではなく、例えば芥子色とか、萌黄、鶯色……といったところ。
腑に落ちた。私が好きになったあの「一言では言い表せない」色は、たしかに「和の中間色」だったし、季節で分けるならあれは春だ。
その後好きな色を追求して自覚したのは、私は新緑や苔色に光が差し込んだ感じが好きだということ。概ね緑だが、色相環で言うと、黄、緑、青のあたりが好き。夏になれば好みが明るい黄色や水色にも寄る。
「春系」と診断されたが、個人的には「初夏系」だと思っている。
ちなみに姉は「秋系」と診断された。夏生まれなのに。似合う色は、黒、赤黒、暗い紫などなど、濃くて黒に近いもの。私と真逆。
「和珪ちゃんは白が似合っていいね。私は白が似合わないのよ」
「白が似合わない人なんているの? 白と黒って、誰でも似合うものでしょ?」
「それが似合わないのよ」
嘘だあ、と言いつつ、姉に私の白い上着を着せてみる。
「本当だ、似合わない」
「ウフフ、お姉ちゃんは魔界の者なのよ」
そして私は黒が似合わないこともわかった。差し色程度ならまだいいが、多く取り入れると似合わないどころか、顔色が暗くなるし、気分も落ちる。
「ウフフ、和珪ちゃんは天界の人なのね。ごめんね、お姉ちゃん魔界の者で。堕天使みたいでかっこよくてごめんね、ウフフ」
なんでもいいけど姉妹でこんなに性質が違うものなのか。
*
自分の好きな色を追求し、持ち物やwebデザインに使い続けたおかげで、姉や親友に私の好きな色が浸透した。今では雑貨店などで私の好きな色を見ると、「これ、和珪さんぽいね」「ワケイグリーンだね」などと言ってくれる。おかげで彼女たちからいただくおみやげ品は「ワケイグリーン」の物が多くなり、私も気に入って、長く愛用することに繋がる。
自分の好きな色を自覚するって、お気に入りの物に囲まれる幸せライフの第一歩かもしれない。
私は過去にカタログ制作の仕事をしていたこともあり、今でもたまにイベントのチラシ作りやフォトカードを作ることがある。だが「感覚の牡牛座」である私は、制作したチラシやフォトカードのほとんどが、好きな色に偏ってしまう。それが自分にとって心地いいから。
小説やエッセイもいくつか書いてきたが、表紙に使用した色もまた然り。プリンターを買うときなど「緑がきれいに出るものを」と店員さんに言ったくらいだ。
私としては文章による表現の方が親和性が高く、重きをおいているつもりなのだが、周りの人間には制作時間が短いチラシやフォトカード作りの方が向いてるように見えるらしく、
「チラシ作りを本業にした方がいいのでは……」
とよく言われる。
なるほど。それが「色に関わる仕事に向いている」ということなのかもしれないな。
などと思いながら、私は今日も文章を書いている。
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