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彼女が飲んでいるもの。
ただそれだけで俺はカモミールティーを飲み続けた。ようやく味にも慣れた。相変わらず美味しいとは思えなかったけれど、淹れた時に漂う香りは俺の心にわずかな平安をくれた。
あの日から彼女の姿を見ることはなかった。
梅雨があけて、もう空は夏模様だ。
心が疲弊していく。
一目見たい。声を聞きたい。涙の理由を知りたい。できれば俺がその涙を拭って、笑顔にしてあげたい。
想いばかりが募り、苦しい。苦しいのにどこか夢見心地な快感がある。
俺はやっと佑彩の気持ちを考えるようになった。
告白をしてきた佑彩。今なら少し分かる気がする。自分の想いをどうしようもなかったんだ、きっと。俺も膨らんでいくこの想いを彼女の顔を見たら溢れさせてしまうかもしれない。いや、俺にそんな勇気があるだろうか?
佑彩はどんなに不安で緊張しただろう。俺はそれに対してなんて不誠実だったんだ。苦い想いが広がる。
佑彩、ごめん。許してなんて言えない。俺は本当に幼かった。
もう共に行動しなくなった佑彩に心で何度も謝った。
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