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一人で帰りたい。
俺は小さくため息をついた。
小雨が内臓に降っている感じがする。
俺でこうなのだから、彼女は?
俺は斜め後ろを歩く畑中佑彩をちらりと見た。佑彩は俺と目が合うと慌てたように目を逸らした。その頬が微かに赤みを帯びる。
あ〜あ。
俺は前に向き直って学生鞄を握り直した。
「どしたん? 幸斗?」
何も知らない佐竹創多がいつも通りののほほんとした顔で俺を見る。
「別に」
思ったより低い声が出て、まずいと思った。
「なんでもねえよ」
少し明るい声にして付け加える。
「ふーん? 佑彩も元気ねえよな?」
なんで鈍感なのにそういうのは気付くかな。
「それ、あたしも思ってた〜」
佑彩の隣にいた山下吏奈が反応する。
まずいな。そう思ったとき、
「え? そんなことないよ! 元気だよ!」
慌てたように佑彩が言うのが聞こえた。
きっと無理して笑ってるんだろうな。
小雨が大粒の雨に変わった。
高校一年のとき、同じクラスになってから気がつけば四人で一緒にいた。男とか女とか意識しなくていい、気楽なところがよかった。二年生になってもその関係は変わらないと思っていた俺は子供だったのか。
俺は一昨日のことを思い出して心の中で大きなため息をついた。
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