納豆war

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2022年の2月、地球の複数の国に、同時に宇宙人達が姿を現した。 「地球人諸君、怯える事はない。我々は友好的な存在だ。君達の良き隣人となる為に地球にやってきた」 宇宙人達はそう言って友好的に微笑むが、その言葉が真実だという保証はない。 それに、今は友好的であったとしても、此方の些細な言動一つで機嫌を損ねられてしまうやも。 そんな緊張感から、先ずは手始めに友好の宴ーー所謂歓迎会を開くことにした各国首脳。 各国の首脳達は、それぞれの国で最高の料理人を呼び出し、最高の食材を使用し、最高の料理で宇宙人達をもてなした。 「地球人は皆親切だ」 「なんて素晴らしい」 「こんな料理は、我々の星にはなかった」 「生まれて初めての食べ物ばかりだ」 「ありがとう。地球人諸君、本当にありがとう」 口々にそう賛辞や謝辞を述べながら、各国の自慢の料理に舌鼓を打つ宇宙人達。 そうして、いよいよ日本の番がやって来た。 「宇宙人の皆さん、これが日本の料理です!」 味だけではなく見た目にも華やかな……贅を尽くした和食や、美味しいと有名な郷土料理等が次々とテーブルに並んでいく。 「おお、素晴らしい」 「なんて美しいんだ」 感嘆の声をあげながら、和食に夢中になる宇宙人達。 しかし、 「う?!」 「な、なんだ?!これは」 「苦しい!苦しい!」 「凄い匂いだ!」 ある料理に手をつけた宇宙人達が急に苦しみ出してしまう。 焦る料理人達と日本の政治家達。 慌てて、料理人の1人が苦しむ宇宙人達に駆け寄ると…… 「納豆?!」 その手には、納豆がたっぷりかかったホカホカの白米がよそられた茶碗が握られていた。 「な、なんでこんな所に納豆が?!」 「誰が持ってきたんだ?!」 あわてふためく料理人達。 実は、それを持ち込んだのは他ならぬ日本国首相本人だった。 世間では、『臭い』やら『食感が気持ち悪い』等と言われ、あまり良い評判を聞かない納豆。 しかし、茨城県出身の首相には、それが悲しかった。 だからこそ、自分の故郷の味でもある納豆を宇宙人達が気に入ってくれたら、少しでも納豆の名誉や地位が向上するのではないかーーそう考えて、首相はおもてなし料理の中に納豆を混入したのだ。 が、結果…… 「我々は本当に友達になりたかったのに」 「酷い裏切りだ」 「地球人は信用出来ない」 「こんな臭い物を食べさせるなんて地球人は野蛮人だ」 怒れる宇宙人達により、地球侵略がスタート。 地球は直ぐに宇宙人達の支配下に置かれ、日本等は3日で首脳陣が降伏を宣言した。 後世では、この出来事を『旧地球日本国NATTO事変』と学習するという。
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