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下準備と下調べ
「ミオさん、ビンゴ!」
「どこ?」
「正面です。」
「おぅ、まじ。」
“ドンッ”
2人組の女の1人と向かいから歩いてきた男がすれ違いざまに軽く肩をぶつかった。
「キャッ」
女はぶつかった拍子で驚きの声を上げ、
“バタンッ”
体勢を崩して転けてしまい
“ガチャンッ”
カバンの中身が散乱してしまった。
「す、すぅ、すいません。」
転けてしまった女は、メガネ女子。いかにも真面目そうな陰気な雰囲気で、謝りながらも顔は下を向いたまま、急いで起き上がってカバンの中身を拾い始めていた。
「もぉ、美緒、大丈夫?」
一緒にいたもう1人のぶつかった女とは全く正反対の今どき女子は呆れながら散らばったものを集め始めた。
するとぶつかった男も屈んで拾い始めた。
「大丈夫?」
ぶつかった女が気になるのか、顔を覗き込みながら声をかけていた。
「だ、だぃ、大丈夫です。」
それでも、女は顔をあげなかったけれど、男は落ちていた手鏡を拾い、
「はい。」
女に差し出した。
「あ、あ…りがとうございます。」
女は顔を少しあげて受けるとまたすぐに視線を外し、手鏡をカバンに入れた。
「すみませんでした。」
女は落ちたものをカバンにしまうと立ち上がり、カバンを肩にかけ直すと足早にその場から去っていく。
そして、男も歩きだそうとしたら、自分の足元に落ちている女の学生証に気づき、手に取った。
「あ!待って!」
少し先の女を追いかけて女と今どき女子を呼び止めた。
「はい。これ、国際学部…佐藤美緒さん。」
学生証と女の顔を照らし合わせながら差し出した。
「あ…あ、ありがとうございます。」
女は受け取ってお礼をいうとそのまま歩いて行った。一緒にいた今どき女子も男に会釈をして、女の方へと向かって行った。
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