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 アッチョンブリケの話の後… 「寝ろ。」  海くんは、あたしの手を離して。  少し強引に横にさせられて…あたしは眠る羽目になった。  だけど…眠れないよ…  久しぶりに、笑ってくれた…  それが嬉しくて、絶対眠れない。  って思ったのに。  あたしは、即寝。  朝、目が覚めた時には…母さんがいて、海くんはいなかった。  でも…ま、いっか。  母さんは、お昼過ぎまで居てくれた。  もういいよって言ったんだけど…そばにいたいのよ。って、来てくれる。  で…今度は… 「よお。」  ノンくん。 「…沙都と沙也伽は個人練?」 「ああ。焦らせるわけじゃないけど、あいつら上達したぜ。」 「そっか…良かった。」  今日はベッドを起こして、座っていられるぐらい体調がいい。  横になるとすぐに眠っちゃうから、座ったままでいいならずっとこれでいたい。 「体力落ちちゃうな…」  小さな溜息とともに、弱音が出た。 「若いんだから、すぐ戻るさ。」  ノンくんは、持って来た紙袋からイチゴを取り出した。 「わ、嬉しい。」 「俺のだけどな。」 「何それ。あたしのでしょ普通。」  今日は…普通なノンくん。  だけど、あたし…  ハッキリ言わなきゃ… 「…ノンくん。」 「あ?」 「あたし…」 「好きな人がいるの。って?」 「え?」 「言わなくても、見てたら分かる。」  ノンくんはドアのそばにある洗面台でイチゴをざっと洗うと、自分の口に一つ入れた。 「うん。んまい。」 「……」  あたしがそれを無言で見てると。  ノンくんは椅子にドサッと座って。 「だから?」  あたしの目を見て言った。 「…え?」 「好きな人がいるの。だから…何。」 「……」 「そんなの、俺には何も関係ない。」 「いや…でも…」  ノンくんはイチゴを一つ、あたしの口にガッと押し込むと。 「おまえが誰を好きだろうと、俺はおまえが好き。こういうのって、好きな奴がいるからって言われたって、どうにかなるもんじゃねーから。」  半分ふざけたような口調で…そう言った。  …確かに…  あたしだって、海くんがあたしをどう思っていようと…あたしは、海くんを好き。  …うん。  だから、ノンくんの言う事も分かる…。  でも… 「ぐちゃぐちゃ考えんな。何かのキッカケで俺を好きになる可能性だってあるんだ。本能を大事にしてろ。」  ノンくんはそう言って。 「これ、マジで美味いな。帰りに沙都と沙也伽にも買って帰ろう。」  ちさ兄に似てるな…  って思わせるような、笑顔を見せた。
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