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〇朝霧沙也伽
「お~…ちょ…度胆抜かれた。」
曽根さんが大袈裟に目を丸くしてる。
まあね…
あたし達、ずっとジーンズとかジャージとかスウェットとか…
とにかくパンツ姿でしか会ってないもんね。
でも、どうよ。
紅美に見惚れちゃうでしょ?
このモデルのような…
「沙也伽ちゃん、可愛いんだなあ。」
「…はい?」
「人妻だから惚れんなよ。」
「うるさいなあ、キリ。可愛いって言っただけじゃん。」
「…あたし?」
「沙也伽ちゃん、すごく似合うね。写真撮って希世ちゃんに送ろうよ。」
「え…え?え?」
「うん。見違えた。」
「え?あ…何、先生まで…」
あたしが戸惑ってると。
「だから言ったでしょ?沙也伽は絶対、このグリーンのドレスだって。」
「……」
ノンくんに言われた言葉を思い出した。
『じゃ、間違いねーな。紅美、おまえの事大好きだから。』
…ちくしょ…
泣けるじゃないのよ…。
「いやー…紅美ちゃんは綺麗だって知ってたけど、沙也伽ちゃん…こんなに化けるなんて…」
化ける!?
曽根さん!!
あんた、褒めてんのかもしれないけど、ちょっとムカつくのは何でかなあ!?
そうは言っても、紅美の安定の美しさは…イブニングドレスによって、倍増した。
パーティー会場に入ると、紅美に名刺を持って近付く人・人・人…
どうも、モデルにならないか…と。
うん。
言われるよ、そりゃ。
でも…
「た…助けて…」
沙都も。
随分と声をかけられて困ってる様子。
うん。
沙都、あんたもモデルみたいだよ。
ちなみに、ノンくんと先生もそうなんだけど…
声かけるんじゃねえ。みたいなオーラ出してるせいか、周りに人が来ない。
曽根さんは、悪くないんだけど…
ウロウロしてるせいか、誰にも相手にされてない。
…さあ。
あたしは、このパーティーで何か起きるんじゃないかな…
なんて思うんだよね。
今日の紅美見たら、渡したくない!!って気持ち、絶対芽生えちゃうよね。
案の定、壁に花を添えてる先生も…人の輪に居る紅美に目が釘付け。
「おい。」
「は?」
「一人で立ってると、狙われるぞ。」
「へ?」
ノンくんがそう言って、シャンパンを持って来た。
「離れるな。」
「う?うん…」
何だろう。と思って周りを見ると…
はっ…
もしかして、あたしを狙ってたの!?
三人組の男が、ノンくんを見て舌打ちするような顔をした。
あたしが狼狽えた顔でノンくんを見ると。
「紅美はこういうのに慣れてるけど、おまえは慣れてないだろうからな。悪い虫につかれちゃ、希世に悪い。」
そっけなく、そう言われた。
悔しいけど、悔しいけどそうよ!!
あたしは、こういうのに免疫ないから、甘い事言われたら…
ああ、ノンくん!!
何でかあんたが天使に見えるわ!!
…だけどさ。
なんで、あたしにくっついてるかな。
紅美のとこ、行けばいいじゃない。
行って…
強引に引っ張ってくればいいのに。
…バカだね。
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