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 〇二階堂紅美  せっかくドレスアップしてるのに。  あたしを囲んでるのは、知らない人ばかり。  …沙也伽に、今は決めなくていいんじゃない?って言われたけど。  あたしの中では…  沙都。  そう…決めて…ううん、決めかけてる…のかな。  ただ、沙都の言う『誰にも言わないで』が引っかかり過ぎて。  なぜか、素直になれない。  …気持ちを口にすれば、違うのかな。  沙都に…  あんたの事、好き。って。  その沙都は、さっきまで女の人に囲まれてた。  今は…  海くんと一緒に、壁際にいる。  ノンくんは…沙也伽と。  …最近、あのツーショット多いな…って、何で気にするの?あたし。 「はーい、ちょっとごめんなさいよ~。」  突然、曽根さんがそう言って輪の中に入って来て。 「この子は忙しいんだから、こんなに同じところで引き留めちゃダメですよー。」  なんて言いながら、あたしの腕を取った。 「え?」 「せっかくドレスアップしてんのに、なんでうちのいい男達の所にいてくれないかな。」 「……」  キョトンとして、曽根さんを見た。 「ニカもキリも沙都くんも、君と一緒にいたいって思ってるはずなのに。君は空気読めない、男どもは意気地なし…困ったもんだね。」  な…  いや…図星…かも。  空気、読めてない。  あたし。 「はーい、ただいま戻りましたー。」  曽根さんがそう言ってあたしを壁際に連れ戻すと。 「気安く触るな。」  沙也伽の隣に居たノンくんが、曽根さんの手をあたしの腕から振り払った。 「いてっ!!何すんだよ!!救って来たのに!!」 「紅美、曽根菌が繁殖する前に洗って来い。」 「あはは、酷いなあ、ノンくん。」 「ねえ、あそこのテーブルに美味しそうな物があるよ。」 「どれどれ。行ってみるか。」 「曽根菌て!!」 「まだ言ってる。」 「あはは。」  …楽しい。  こうなると…  誰か。って決めるなんて、バカらしく思える。  あたしは、みんなが好き。って事にして…  都合のいいように甘えたいって思ってしまう。  だけど…  本当に疲れたり、悲しい時。  今は…沙都に癒されたいって思ってる自分がいる。 「…紅美ちゃん。」  料理のあるテーブルに行くと、隣に沙都が来た。  のっぽの沙都は、ヒールを履いたあたしよりも、まだ目線が高い。 「綺麗だ…」 「…ありがと。」  腰に手が回って来て…少しドキドキした。  一応…みんなの視線が気になったけど。  沙都に連れられて…あたし達はバルコニーに出た。 「…綺麗過ぎて、ちゃんと見れないや。」  沙都はあたしの髪の毛を耳にかけながら…見つめたり、目を逸らしたり。 「バカ…」 「ほんと…綺麗だ。」 「…沙都も、カッコいい。」 「ほんと?」 「うん。」 「……紅美ちゃん。」  唇が…近付いて。  あたしは、今しかないと思って。 「沙都…」 「ん?」 「…好き…」  小さくつぶやいた。 「……え…」  だけど。  沙都の反応は…  あたしが思ってたのとは…  違ってた。
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