51人が本棚に入れています
本棚に追加
〇二階堂紅美
せっかくドレスアップしてるのに。
あたしを囲んでるのは、知らない人ばかり。
…沙也伽に、今は決めなくていいんじゃない?って言われたけど。
あたしの中では…
沙都。
そう…決めて…ううん、決めかけてる…のかな。
ただ、沙都の言う『誰にも言わないで』が引っかかり過ぎて。
なぜか、素直になれない。
…気持ちを口にすれば、違うのかな。
沙都に…
あんたの事、好き。って。
その沙都は、さっきまで女の人に囲まれてた。
今は…
海くんと一緒に、壁際にいる。
ノンくんは…沙也伽と。
…最近、あのツーショット多いな…って、何で気にするの?あたし。
「はーい、ちょっとごめんなさいよ~。」
突然、曽根さんがそう言って輪の中に入って来て。
「この子は忙しいんだから、こんなに同じところで引き留めちゃダメですよー。」
なんて言いながら、あたしの腕を取った。
「え?」
「せっかくドレスアップしてんのに、なんでうちのいい男達の所にいてくれないかな。」
「……」
キョトンとして、曽根さんを見た。
「ニカもキリも沙都くんも、君と一緒にいたいって思ってるはずなのに。君は空気読めない、男どもは意気地なし…困ったもんだね。」
な…
いや…図星…かも。
空気、読めてない。
あたし。
「はーい、ただいま戻りましたー。」
曽根さんがそう言ってあたしを壁際に連れ戻すと。
「気安く触るな。」
沙也伽の隣に居たノンくんが、曽根さんの手をあたしの腕から振り払った。
「いてっ!!何すんだよ!!救って来たのに!!」
「紅美、曽根菌が繁殖する前に洗って来い。」
「あはは、酷いなあ、ノンくん。」
「ねえ、あそこのテーブルに美味しそうな物があるよ。」
「どれどれ。行ってみるか。」
「曽根菌て!!」
「まだ言ってる。」
「あはは。」
…楽しい。
こうなると…
誰か。って決めるなんて、バカらしく思える。
あたしは、みんなが好き。って事にして…
都合のいいように甘えたいって思ってしまう。
だけど…
本当に疲れたり、悲しい時。
今は…沙都に癒されたいって思ってる自分がいる。
「…紅美ちゃん。」
料理のあるテーブルに行くと、隣に沙都が来た。
のっぽの沙都は、ヒールを履いたあたしよりも、まだ目線が高い。
「綺麗だ…」
「…ありがと。」
腰に手が回って来て…少しドキドキした。
一応…みんなの視線が気になったけど。
沙都に連れられて…あたし達はバルコニーに出た。
「…綺麗過ぎて、ちゃんと見れないや。」
沙都はあたしの髪の毛を耳にかけながら…見つめたり、目を逸らしたり。
「バカ…」
「ほんと…綺麗だ。」
「…沙都も、カッコいい。」
「ほんと?」
「うん。」
「……紅美ちゃん。」
唇が…近付いて。
あたしは、今しかないと思って。
「沙都…」
「ん?」
「…好き…」
小さくつぶやいた。
「……え…」
だけど。
沙都の反応は…
あたしが思ってたのとは…
違ってた。
最初のコメントを投稿しよう!