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〇二階堂 海
「紅美ー!!」
華音が紅美の首根っこを摑まえて。
「うわっ!!や…っ!!ぎゃー!!」
枕で、ボカスカと殴る。
「あははは!!」
俺は…
目の前の光景に、違和感を覚えながらも。
「もー!!なんであたし!?」
「おまえが悪い!!」
紅美が笑っているなら…と。
黙認はしている。
パーティーの後。
男性陣の部屋で飲むことになった。
すっかり普段着になった紅美と沙也伽は。
見た目いつもの二人だが…
紅美は…やたらとテンションが高い。
これは…あれだよな。
絶対、バルコニーで沙都と何かあったよな。
いい雰囲気で、二人で出て行って。
少なからずとも…俺と華音は心の中で溜息をついたはずだ。
…決まったか…。と。
だけど、間もなくしてバルコニーから戻って来た二人。
その時から紅美は…
「うわ、何これ。美味しそう。ねえ、ちょっとどうにか部屋に持って帰れないかな。飲もうよ。」
少し…テンションがおかしくなっていた気がする。
俺が、悩みがあるとタバコを吸うのと同じで。
紅美は…悩むとはしゃぎ過ぎる。
…あの頃と変わらないな。
そう思うと…
俺は、思い悩んでいるとしても、今の状況を楽しんでいるのかもしれない。
もう、何ヶ月。
タバコを吸っていないだろう。
「ねえねえ、海くん。桜花に来てる時にさ、可愛いなって思ってた生徒っている?」
「ぶふっ。」
紅美の問いかけに、つい噴き出してしまった。
「あーっ!!いるんだ!!先生!!誰々!?」
沙也伽も酔っ払ったのか…テンションが高い。
「羨ましいなあ…女子高生に囲まれてたなんて…」
「トシ、囲まれてはない。俺は教師として行ってたんだ。」
「え~?囲まれてたじゃん。弁当作ったり、お菓子作ってくる生徒いたよね。」
「…紅美。」
「ね、いた?可愛いと思ってた生徒、いた?」
紅美は面白がって、キラキラした目で言う。
「…ああ、いたね。」
「何組の誰!?」
「千世子。」
「あ…」
一瞬にして、静かになった。
トシだけが状況が分かってなくて。
『後で説明するから』と、沙都に小さな声で言われている。
「それと。」
「え…先生、意外と生徒に目つけてたりした?」
沙也伽にそう言われて。
「付けてたさ。」
「うわ~…教師を見る目変わっちゃうよ~。」
「ずっと、紅美に目付けてた。」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
ゴクン。
誰かの生唾を飲み込む音が聞こえて。
「ははっ。誰だよ。そんなに緊張してんの。」
「す…すまん、ニカ。俺だ。」
トシが正座なんてするから、笑ってしまう。
「…ずっと紅美に目付けてたのに、沙都がチョロチョロしてたから、なかなかチャンスなくて。」
グラスの氷を揺らしながら言うと、沙都はキッと食いしばった。
「ま…真面目なニカの発言とは…」
「俺、真面目かな…保健室で寝てた紅美にキスしたけど。」
「!!!!!!」
みんなが目を見開いた。
「言っとくけど…」
俺はグラスをテーブルに置くと。
誰にともなく言った。
「俺と紅美は終わった。紅美が誰を選ぶとしても、俺は応援するつもりだ。でも、俺の気持ちはまだ紅美にある。」
「……」
「俺を甘く見るなよ。紅美を悲しませる奴は…」
宣戦布告だ。
沙都。
「許さない。」
紅美に悲しい想いをさせているであろうおまえを…
俺は…
許さない。
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