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 〇二階堂紅美 「沙都、い…痛い。」  沙都に掴まれた手が痛くて。  あたしは、廊下を歩きながら沙都に言った。 「離して。」 「…嫌だ。」  沙都はあたしの顔を見ない。  でも、力も緩めない。  あたしと沙也伽の部屋の前まで来て。 「…カードは。」  沙都が低い声で言った。 「……」  羽織ってたパーカーのポケットからカードキーを出すと。  沙都はそれでドアを開けて… 「な…」  いきなり。  キスして来た。 「ちょ…沙都…」 「みんな同じぐらい好きって…どうして…?僕の事、もう嫌いになったの?」  沙都は今までになく…乱暴で。  あたしをベッドに押し倒すと。 「海くんに告白されて…嬉しかった?」  低い声で…そう言った。 「…何それ。」 「僕の目の前で、あんな事…あてつけにしか思えない。」 「…そうよ。あてつけよ。」 「……」 「だって、沙都は…あたしの気持ちなんて要らないんでしょ?自分が好きだったら、それで良かったみたいな言い方して。」 「違う。」 「何が違うの?言ったよね?あたしは、海くんかノンくんを好きだと思ってたって。何なの?あたし、沙都に好きって言ったのに、どうしてそんな風に言われなきゃいけなかったの?」 「紅美ちゃん。」  沙都はあたしの上に乗って、首筋に唇を押し当てた。 「…離して。こんなの、イヤ。」 「好きだよ。」 「イヤ、したくない。」 「愛してる…」 「…言い逃れのために、そんな事言わないで。」 「言い逃れなんかじゃない…紅美ちゃんの事、愛してる…」 「……」 「…さっきはごめん…僕、自分に自信がなかったから…」  沙都は、あたしを押さえ付けてた力をゆるめて。 「僕より、海くんやノンくんの方が男らしくて…大人で…だから、かなわないって思ってたから…」  小さくつぶやいた。 「…それでも…ショックだった…」 「…ごめん。」  沙都は切なそうな目で、あたしを見て。 「…紅美ちゃん…好きだよ。」  ゆっくりと…キスをした。 「沙都…」 「僕の事、好き?」 「…うん…好き…大好き…」  沙都の背中に手を回す。 「…ドレス、似合ってた…」 「沙都も、カッコ良かった。」 「バルコニーで…キスできなくて残念だったな…」 「…してくれなくて、悲しかった…」  沙都の手が、あたしの体を優しく触って。  懐かしい幼い手は、すっかり男の手だと思った。 「あ…っ…」 「紅美ちゃん…」  沙都。  あたし…  もう、ブレないよ。  小さな頃からずっとそばにいてくれた…  あんたの事…  大好き。  ずっと…  そばにいて。
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