10

2/3
前へ
/169ページ
次へ
 〇桐生院華音 「ニカ!!寂しいぜ!!」  朝から何度もそう言っては泣いている曽根。  一ヶ月の滞在と言いながら、結局曽根は俺達の帰国に合わせて、今日まで二ヶ月一緒にいた。 「また遊びに来いよ。」  あの家に愛着の湧いた海は。  一人じゃ広すぎるから寂しいんじゃないか?と言ったにも関わらず。  越さない。と笑顔で言った。  …ま、機会があれば、泊りに行ってやろう。 「帰国する事があれば連絡しろよ。」 「ああ。その時には、是非『あずき』に連れてって欲しいね。」  海が曽根の顔を見ながら言うと。 「あいたたた…なんか…ニカがキリに似てきた…」  曽根は胸を押さえてそう言った。  旅の二日目の夜。  沙都は部屋に戻らなかった。  まあ、紅美の部屋にいるだろうと踏んで。  沙也伽には、沙都のベッドを使わせた。  俺と海と曽根は、反対側の部屋の、俺と海のベッドをくっつけて、三人で寝た。  翌朝戻ってきた沙都は。 「…迷惑かけて、ごめんなさい。」  俺達に頭を下げた。 「バーカ。」  そう言って頭を叩くと。 「…ほんと、バカだよね。でも…ありがとう。」  顔を上げた沙都は…笑顔だった。  夕べは海の部下の富樫(あ、年上だ)も呼んで、パーティーをした。  沙都と紅美は堂々とくっついてたし、もう…どこから見ても恋人同士だ。  俺はそれを特にどうとも思わない…ようにしていたのかな。  紅美が笑っていれば…それでいい。  だけど…  俺の中には、一つ。  ずっと引っかかっている事がある。  沙都には言わなかったが…  沙都も、俺には言わなかった。  紅美にも…話してるとは思えない。  …グレイスの件だ。 「本当、楽しかった。」  海がハグして来た。  少し面食らったが、背中をポンポンとして応えた。  …実際、楽しかったしな。 「帰ったら、さくらさんによろしく伝えてくれ。」 「ああ。必ず。」  海。  あんた、いい男だよ。  紅美はあんたを選ばなかったけど…  きっと、いつか…  いい恋が出来るといいな。  …お互い。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加