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〇二階堂 海
「……」
みんなを見送って家に帰ると。
その広さに…その静寂さに、小さく溜息が出た。
二ヶ月…
たった二ヶ月だったのか。と思わせられるぐらい、濃い日々だった。
紅美と終わらせて…
きっと紅美は華音と始まるだろう。
そう思っていた矢先…
始まったのは、とんでもない事だった。
俺と、華音と沙都のシェアハウス。
そこへトシも入って…
男四人での二ヶ月間は。
俺の人生の中で、最もあり得なく最も忘れがたい二ヶ月となった。
…早乙女さんを父と呼べるようになった。
ずっと自分の存在を不確かに思えていた俺は…
あの人が、俺を愛してくれていると認識する事ができて…
何か…ずっと抱えてた呪縛から解き放たれた気がした。
…俺の生まれた時の体重が、暗証番号だなんて…
今思い出しても、胸の奥がくすぐったい気がする。
良く思われてない…なんて、勝手に被害妄想して。
とことん自分で首を絞めていたな…。
ソファーに座って、ツリーを眺める。
華音の作った名前入りのリース。
写真立てとスマホに、みんなで撮った写真。
紅美と沙都は恋人同士になった。
それでも…俺は今も紅美を好きで。
華音が選ばれなかったのは…少し残念にも思うが。
…紅美が。
幸せなら、それでいい。
写真の中。
紅美も沙都も…
華音もトシも沙也伽も…俺も。
みんな笑顔だ。
この家で暮らしていた、俺の…祖父にあたる浅井 晋さん。
先代がずっと悔いていた、あの事件で亡くなった丹野 廉さん。
そして…さくらさん。
三人が笑って過ごしていたであろうこの場所で。
俺も…笑えた。
そして、色んな鎖を断ち切れて…解放された。
一人では広すぎるとみんなに言われたが…
愛着があり過ぎて、離れられない。
いつか、と思う。
また…いつか。
みんながこっちに来た時に。
懐かしい。と笑い合いながら、ここに集まれば、と。
そのためにも…
俺は、オンとオフをしっかり使い分けて。
ちゃんとここに戻ってくる。と、集中して仕事をする。
そして…
二階堂を変えるために。
二階堂のみんなの将来を変えるために。
生きる。
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