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 〇二階堂紅美 「紅美。」  帰国して迎えた大晦日。  事務所の帰りに一人で歩いてると…声をかけられた。 「空ちゃん。」  振り返ると、そこにいたのは空ちゃん。 「元気?」 「うん。」 「その後、貧血は?」 「大丈夫。ちゃんと平均値。」 「そ、良かった。」  空ちゃんは何かの買い物の帰りだったのか、紙袋をたくさん持ってる。 「少し持とうか?」 「ううん。その先に車停めてるから。乗って帰る?」 「あっ、ラッキー。ありがと。」  そんなこんなで、空ちゃんの車に乗せてもらって。  ついでに…マンションにもお邪魔する事にした。  何でも、空ちゃんは生まれて初めて、御節作りにチャレンジするそうで。  今日はその買い出しに行ってたらしい。  空ちゃんが御節作りかー。  やっぱり奥さんは違うなあ。  泉ちゃんよりは料理してたと思うけど、二階堂姉妹は家事より仕事のイメージの方が強い。 「ただいま。」 「お邪魔しまーす。」  ひろーい玄関に入ると。 「おかえりー…え、紅美?」  夕夏を抱っこした、わっちゃんが出迎えてくれた。 「わー…わっちゃんが子育てしてる…」  当然なんだけど、何となく…見慣れない光景に小さく笑ってしまった。 「当たり前だろ?」  当たり前には思えないけど…  まあ、良かったよ…  ちゃんと子育てに参加してて。 「二月からアメリカに単身赴任なの。」  キッチンに紙袋を運びながら、空ちゃんが言った。 「えっ?誰が?」 「わっちゃん。だから、今のうちにベタベタしとかなきゃね。」 「あー行きたくなーい。」 「パパ、頑張って。」  そっか…  日本でも色々状況は変わってるよね…  実際、もめてるって聞いてたDEEBEEは…  サポートを頼むんじゃなくて…正式メンバー探しが始まりそうだ。 「…紅美、綺麗になったな。」 「え?」  空ちゃんを手伝って食材を出してると、いきなりわっちゃんに言われた。  …確か、海くんと付き合い始めた頃にも、そんな事言われたよな…  …鋭い。 「誰かとどうにか始まった?」  空ちゃんにも顔を覗き込まれた。 「始まったって言うか…」  別に…もう言ってもいいんだよね?  旅の二日目の夜…  沙都はあたしを抱いて、そのまま朝まで部屋に居た。  沙也伽は…ちゃんと男性陣がいいようにしてくれてたみたいで。  沙都が部屋に戻った後で、沙也伽も戻って来て。 「まあ、あんたが幸せならあたしはいいけどね。」  って、目を細くして笑った。  あの家での最後の夜も…  クリスマスパーティーで、沙都はあたしのそばにいて腰を抱き寄せてたし…  もう、バレバレだよね。  いいんだよね。 「…沙都と…付き合うって言うと…今更だけど…」  あたしがしどろもどろに答えると。 「えっ!?」  空ちゃんが、予想以上に驚いた。 「な…何?」 「いや…なんか、ちょっと…予想外な気もして。」 「そう…?」 「まあ、沙都なら間違いないだろ。昔から紅美にくっついて歩いてたんだ。紅美の事をよく分かってる。」  わっちゃんがそう言って。 「うん…そうだよね。うん。ほんとだ。」  空ちゃんは、笑顔であたしに言った。 「良かった…紅美が幸せそうで。」 「…ありがと。」  海くんとの時…みんなに心配をかけた。  今度は…  沙都とは…  ちゃんと、笑い合っていきたい。  …結婚は…  全然頭にないけど…  でも、いつか。  タイミングが来たら。  沙都と…そうなりたいな…
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