11

2/16
前へ
/169ページ
次へ
 〇朝霧沙也伽 「紅美と沙都?」 「うん。」 「……」 「驚いたでしょ。」 「ああ……って、驚かねーっつーの。」  あたしは帰国してすぐ、希世に沙都と紅美の事を話した。  ビックリするだろうと思ったけど…  希世は全然驚かなかった…!!  なんでー!?  あたし、大スクープって思ってたのに!! 「だいたい、俺、ずーっと紅美と沙都は付き合い続けてるんだと思ってたし。何、あいつら途中別れてたんだ?」  …あ。  そっか。  そうだよね。  紅美が先生と何かあったとか。  ノンくんが参戦して、三人が紅美を奪い合ったとか。  そんなの…誰も知らないよね…!!  あー!!なんだ!!  つまんなーい!!  みんなに言っちゃえば良かったよ!! 「それより…頑張ったな、沙也伽。」  希世は突然…真顔。 「…え?」 「アメリカデビューなんてさ…なかなかできるもんじゃないぜ?」 「……希世。」  そうだ…  あたし、旦那を差し置いてアメリカデビューだよ。  しかも…  希世のバンドは、その間に…メンバー交代を余儀なくされる事態に。 「…DEEBEE、大丈夫?」  少し遠慮がちに問いかけると。 「平気平気。一人抜けたぐらいで潰れやしないさ。」  希世はのんきそうに言ったけど…  でも、辛いよね…  ずっと、辛い時期も一緒に乗り越えてきたメンバーだもん… 「でも…少し堪えた…。」  珍しく…希世が弱音を言った。  あたしは希世に手を伸ばして…頭を抱き寄せる。 「…ごめんね…そんな時にあたし…向こうで青春してて。」 「…青春してたのか。」 「うん。すごく。」 「…ま、楽しかったならいいよ。帰ったらおまえには仕事の上に育児もついてくるし…」 「あたしが帰ったからって、怠けないでね。」 「もちろん。」  とは言いながら…  あたし達は同居してるから、普通の夫婦の子育てよりはずーーーっと楽ちん。  だって、朝霧家…  みんなすごく協力的だもん。 「…浮気しなかった?」 「するかよ。」 「ほんとに?」 「疑ってんのか?」 「ジャケットのポケットに、電話番号書いた紙が入ってた。」 「えっ!!」  あたしはカマをかけただけなのに。  希世は大きな声でそう言うと。 「あっあああああれは、違うんだ!!」  あたしから離れて…慌ててる。  …こいつ…  浮気しやがったな…!? 「希世…」 「違う!!ちょっと…ちょっと付き合いで…」 「何の付き合いよ。」 「その…」  ゴクン。  希世は生唾を飲む音を部屋に響かせて。 「その…しゃ…社会勉強のために、行っただけで…」  狼狽えた。 「行った?どこへ。」 「……」 「希世。」  あたしがすごむと。 「…風俗…」  希世は小さくつぶやいた。 「……あんたとは一生寝ない。」 「沙也伽!!悪かった!!でも聞いてくれ!俺はやめとこうって言ったんだ。だけどあいつがどうしても社会勉強のためにって言うし、おまえはアメリカだし、俺も寂しくてついって言うか、でも全然気持ち良くなくてやっぱおまえじゃないとダメだって、でも俺も男だから仕方なくその」 「うるさい。」  希世の言葉、途中で遮る。  本当は、そんなに腹は立ってない。  だって、あたしも…風俗じゃあないけどさ。  男前に囲まれて、旅したりパーティーしたり、飲んだりしてたわけだし。  だけど、またみんなで遊びに行ったりしたいから、これは希世の弱みとして掴んでおこう♡  希世、愛してる♡
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加