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 〇朝霧沙也伽  朝霧家のリビングには…家族全員が勢揃い。  その上…ノンくんと神さんも来てる。  今日は大晦日で。  あたしは、事務所から帰った後、お義母さんと御節を作った。  …何も知らなくて。  だから…  今、目の前の会話が…嘘に思えて… 「どういう事だ?」  お義父さんが、沙都に問いかけると。 「…神さんが、話した通りだよ…」  沙都は、小さく答えた。  神さんが話した通りって… 『おまえ、ソロでアメリカデビューするって言ったらしいが本当か?』  …ソロで…アメリカデビューって… 「…でも、それって…別に悪い事じゃない…よね?」  瞬きができないな…なんて思いながら、誰にともなく問いかけると。 「…悪い事じゃないな。でも、DANGERは脱退しなくちゃならないけど。」  神さんの言葉に、あたしは目を見開いた。 「え…っ…脱退…?」 「そういう話だったんだろ?グレイスの話は。」 「……はい。」  脱退…  バンド辞めて、ソロで…って事?  そりゃ、上手かったよ?  カプリで沙都の歌聴いて、本気で癒されたもん。  だけど…  アメリカでソロデビュー?  なんで?  …成功すると思ってんの? 「…何で勝手に決めんだよ…」  ノンくんの低い声。  あたしはもう…呼吸すら難しく思えた。  だって…  紅美は…?  紅美は、知ってんの…? 「…ノンくん…沙也伽ちゃん、ごめん…僕…色々考えた。」 「……」 「最初は…絶対そんな気ないからって断った。だけど…ちょっと…夢を見たくなったんだ。」 「…夢って…何だよ。」 「…自分のために…頑張るって言うか…」 「……」 「グレイスに言われたんだ。バンドとしてじゃなく…ソロで…僕個人で…夢を見ないかって。」  あたし達は…勝手に。  この楽しい時間が続くんだと思ってた。  永遠に。  永遠なんて…  存在しないのに。
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