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〇二階堂紅美 「……」 「……」 「……」  正月早々…集まった。  あたしと、沙也伽と、ノンくん。  ビートランドは年中無休。  一応年末年始の挨拶はあるけど…淡泊な物だ。  あたし達三人は、プライベートルームで…長い沈黙と、重たすぎる現実に押し潰されそうになっていた。 「…紅美。」  沈黙を破ったのは、ノンくんだった。 「…ん?」 「沙都について、アメリカに行く気は?」 「ノンくん!!何言ってんの!?解散するつもりなの!?」  沙也伽が泣き腫らした顔で言った。 「…二人は付き合ってんだ。結婚とか幸せとか、そういうワードが出てくるなら、バンドは二の次だろ。」  ノンくんの言葉に、沙也伽は反論できず。  あたしを見て、口をパクパクさせた。 「…あたしは…沙都のいないDANGERなんて…って思う…」  正直に言った。 「紅美…」  沙也伽は首を振りながら。 「あたし…やだよ…解散なんて…」  そう言って、泣き始めた。 「…どうしても、脱退しなきゃいけないの?沙都、ソロをやりながらバンドもって方法はないのかな…」  あたしが指を玩びながら言うと。 「…無理だな。グレイスが進めてるプロジェクトは、世界進出らしいから。」  ノンくんは吐き捨てるように言った。 「…世界進出?」 「ああ。アメリカデビューどころの話じゃない。世界発信さ。沙都が夢見たって…仕方ないよな。」 「……」  沙都の歌が、それだけ買われた…って言うのは。  すごく、嬉しい事だ。 「…なんかさ…」  あたしは、首を傾げて言う。 「そんなにすごい事…本当なら、みんなで万歳して喜ぶべきだよね。」  つい…口元がほころんだ。  沙都、すごいよ。  ほんと…すごいよ。 「…そうだな。あいつ、世界に通用するって認められたんだからな…」  ノンくんは、ほんのり笑いながら言った。  だけど… 「なのに…DANGERのメンバーだからって事で…お義父さんに殴られたり勘当されたり…か…ちょっとかわいそうだよね…でも…」  沙也伽は…そう言いながらも、涙が止まらない。 「でも…あたし…やだよ…解散なんて…」 「沙也伽。解散なんてしないよ。」 「だって…かけもちなんてできないでしょ…?それに、紅美だって…」 「…沙都と、もっとちゃんと話すから。」  あたしは沙也伽の背中に手を当ててそう言ったけど。 「…でも、そう時間はないぜ。」  ノンくんが溜息まじりに言った。 「え?」 「あいつ、たぶん…今週中には向こうに行くと思う。」 「えっ?今週中…?」  そんなに…そんなに急に? 「本当なら、帰国もさせたくないぐらいだったからな…グレイスのプロジェクトは、こうしてる間にも進み続けてる。」 「……」 「…紅美、沙都に…ついてくの…?」  沙也伽は、そう言ってあたしの手を握った。 「本当なら、おめでとうって…行きなよ…って…言ってあげるのが…親友なんだよね…?ごめん…紅美…あたし…」 「沙也伽、いいんだよ…」  あたしは沙也伽の肩を抱き寄せる。  …沙都。  あたし達…  どうすればいいんだろうね。  どうしたら…  一緒に居られるのかな…。
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