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〇二階堂紅美
4月になった。
あたし達は、ノンくんとあたしのツインボーカル、ツインリードって形で新しく練習を始めて。
それが…本当に驚くほどすんなりと…
「うん。いいわね。これで行きましょう。」
グレイスに、認められた。
あれよあれよと言う間に話が進んで。
5月からは、有名なライヴハウスに…単独ではなく、有名どころの前座として出演したり、地元のバンドと対バンでライヴに出演させてもらう事になった。
一週間に4日、それが4ヶ月間続く。
…ちょっとハードだ。
父さんからの寂しいから帰って来てくれコールに、やっと…母さんが日本に帰った。
忙しくなると、家で食事するのもままならなくなるから…その方が良かった。
でも、本当…この数か月。
母さんが居てくれた事は助かったし…充実させてもらえたし…心から感謝した。
帰ったら親孝行しなきゃ。って本気で思った。
健康管理にも気を付けた。
貧血の検査もだけど…婦人科検診も受けてみた。
もう、みんなに余計な心配かけたくないし。
あらためて、一人の体じゃない。って言い方は…妊娠中だけに限らないんだなって思った。
「おまえ、なんでレの音だけ少しフラット気味なんだよ。」
ノンくんは、歌に関しても厳しかった。
「え?僕外れてる?」
「レ、だけな。」
「外れてたかな…」
「沙都、ノンくんの耳の良さは地獄って言われるそれと同じだから、間違いないんだよ。」
「沙也伽…誰が地獄耳だ。」
「あれっ、聞こえてた?」
「…隣で堂々と言いやがって…」
「レ…これ?~♪♪♪」
「そう。」
「ベースラインに釣られてるのかな。」
「ちょっと、あそこだけ弾き方変えていい?」
厳しくても。
忙しくても。
あたし達は、同じ方に向いてる。
有名バンドの前座を務めた夜は…会場の外に用意してあったCDの予約券が全部なくなった。
対バンのライヴは、回数を重ねるごとにファンがついて。
「次のライヴは、トリで。」
一ヶ月が過ぎた頃には…トリを任されるようになった。
「やーらしく激しく、あたし達『DANGER』らしく!!」
「Yeah!!」
あたし達は。
Live aliveでやったこの掛け声を、今も使ってる。
ステージ袖で円陣を組んで、最後はハイタッチ。
日本では、DEEBEEが第一弾のシングルがミリオンをとって。
もうじき第二弾が発売される。
あたし達も…頑張らなきゃ。
そうして、ライヴを重ねて…
普通はCD発表と共にデビューってパターンだけど。
あたし達は、それが売れたらデビューが決まる。
まずは50万枚売れたら。なんて、すごく高いハードルを設定されたけど。
週に四回のライヴは効果があったようで…
「50万枚、クリアしたわよ!!」
グレイスがあたし達に抱きつきながら、そう言った。
あたし達…デビューするんだ!!
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