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 〇二階堂紅美 「……」  あたしは、ギターを手にしてソファーに座って。  一人で考え事をしながら…ギターを弾いた。  今まで…ミーティングの時だってずっと…ノンくんは、片時もギターを離さなかった。  ずっと弾いてたよ…。  ただ才能があるんじゃなくて…努力もしてたんだよ。  なのに、あたし…  ノンくんには分からないみたいな言い方してしまった。  母さんに言われた事も…胸に響いた。  あたし、何でも無駄に出来ちゃってたからな…  挫折を味わうと…途端に弱くなる。  …うん。  大正解。  あたし、今まで何を頑張って来た?  自分に正直にしてるだけで、みんなから愛されて。  なのに、生い立ちが最悪!!ってグレて。  海くんと別れて壊れて。  もっと壊れたいって…色んな人を傷付けて…  あー…!!  あたし、最悪!!最低‼︎  ノンくんの歌もギターも、最高だよ。  だけど…自惚れかもしれないけど…あたし、追い付けなくないかも。  だって、楽しくてやってるだけで…今ぐらい出来るんだから。  本気になれば…  いや、もう本気だったけどさ。  もっともっと本気になって、あたしの全てで頑張れば…  ガチャ  ドアが開いた。  母さんかな?  首だけ振り返ると… 「おす。」  …ノンくん。 「…沙都は?」 「麗姉が飲みに行こうって出てった。」 「…元気だな…母さん。」  何となく顔が見れなくてギターを弾き始めると。 「…紅美。」  ソファーの後から…ノンくんに、抱きしめられた。 「……何これ。」 「俺…マジだから。」 「…何が…」 「おまえの歌じゃないと…弾かねーよ…」 「……」 「俺がバンドに入った時…何でサラブレッドの道を選んだのかって聞いたよな。」 「…うん…」 「おまえが、歌ってたからだよ。」 「……」  ノンくんからは…超、お酒のにおい…!! 「…酔っ払って言われても、説得力ない。」 「おまえは、俺の才能がどーとかつまんねー事言うけどさ。」  話聞けよ!! 「つまんねー事?才能がある事がつまんねー事なの?」 「つまんねー事だよ。そんなのがあっても、やりたい事と違えばつまんねー事でしかねーじゃん。」 「……」 「そのためにも、これから俺は全力でおまえにぶつかる。だからおまえも…俺に潰されずに…頼むから、俺を超えてくれ…。」  すごく…  すごく、プレッシャーな言葉が次々に出て来た。  だけど…  全力であたしにぶつかるって言ってくれたのは…嬉しかった。  合わせる。じゃない。  …あたし、超えれるかな。  いや、超えなきゃいけないんだよ。  あたしが無言でギター弾いてると。  ずずずずず…と、ノンくんが身体を落として行って。 「かー…」  床に倒れ込んで…寝てしまった。 「…何なの…」  あたしは小さく笑って、ノンくんに毛布をかけると。  ノンくんをそのままにして…ギターを弾き続けた。  グレイスは嫌な顔をしたけど、あたし達はスタジオに通った。  そして、ノンくんのボーカルで練習をした。 「違う。沙都、そこはスライドさせろ。」 「あっ…うん。」  ノンくんは…  容赦なかった。  沙都と沙也伽は泣きそうになってたけど。  あたしは…もっと早くこうして欲しかった。って思うぐらいだった。  楽しくやって来た。  それがダメとは言わないけど、今はダメだったって事にして。  常に自分に厳しくしたいと思った。  毎日、ジムに通った。  体力作りも、今までみたいにリビングで適当にするんじゃなく…ちゃんとメニューにそってやりたいと思ったから。  気付くのが遅いぐらいかもしれないけど、何もしないよりは、いい。  家に帰ると、母さんが料理をしてくれてて。 「もう、このまま一緒にいて~。」  なんて沙都に言われて嬉しがってた。  沙也伽は、ご両親がスタジオ見学に来たりして…  あまりのノンくんのスパルタぶりに、ヒヤヒヤしてたみたいだけど…  それでも頑張る沙也伽の姿を見て…何だか安心したのか。  一ヶ月滞在の予定が、三週間で帰国された。
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