雪が積もった日の物語

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 放課後は、君とゆっくり話せるチャンス。 それなのに、今日は雪が朝から降っていて、帰るころには、五センチほど積もっていた。 この地域では滅多に雪が降らないため、正直雪の中登校するのは怖かった。 でも君が、雪だけど学校行くって言うから、頑張って来た。 「お待たせ~。小倉君、帰ろう~」 机に顔を伏せて寝ている僕に声をかけたのは、江畑直美、今日も学校に来るよう言ってきた張本人。 でも、校内ではあまり話はしない。 帰り道の、駅までの道のりの五分程度か、放課後の居残りや部活の時間だけ。 僕たちの関係は恋人ではないし、友達と言えるほど互いを知らない。  僕たちの出会いは、snsだった。 とあるアイドルを推していて、現場で出会った。 なので、互いに最初はハンネで呼び合っていた。 しかし、中学に入ったとき、同じクラスになった。 そこで互いの本名を知り、席も近くて違和感のない程度に話していた。 互いにオタクであることは秘密にして学校生活を送るため、教室内での会話は、とても淡泊な感じだった。 次の授業の話とか、ご飯の話とか。 でも、その会話は意外と楽しい。 初めて会ってから、三年ほど経っているが普段話す事とは違う話題のため、僕は楽しんでいた。  「今日は一日中雪ですって、先輩」 「桃田、急に話しかけないで、って何回も言っているじゃない…」 急に話かけられたので、食べていたおにぎりの梅干しが落ちてしまった。 「江畑先輩って驚くとすぐ物を落としますよね~。代わりに私の卵あげますね」 彼女お手製の卵焼きを口に入れてもらう。 滅茶苦茶おいしくて、さっきまで考えていたことを思い出せなくなる。 「先輩、また昔の事考えていましたか? いつも雪の時になると切ない顔していますもん」 そんなに切ない記憶かしら…。 確かに思いを伝えることなく、今では疎遠。 でも、もう十年近く前の事だから。 そう思い、私は想いに蓋をした。 つもり積もった想いが雪崩を起こす前に溶けたらいいな。
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