イケメン恐怖症

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ああもう、話を聞いてるだけでぞわぞわしてきた。 よし、ここは戦略的撤退としましょう。 私は急いでサンドイッチを食べ進め、コーヒーを飲み干す。 返却口にトレーを突っ込んで、足早に店を出た。 外に出ると熱風が頬を撫でる。 八月に入っていよいよ夏は最高潮にテンションが上がっている。 連日続く酷暑は容赦なく私に焼き色をつけにかかる。 「あっつ……」 短くぼやきながら、会社へと歩を進める。 私が勤める会社はここから徒歩五分。それでも、この暑さの中ではとても遠い道のりに思えてきた。 じりじりと上と下から焼かれて、まさにオーブントースター状態。 髪型、アップ系のやつにすればよかったな。 首元にまとわりつく髪の毛を鬱陶しく思いながら後悔する。 これも会社に帰るまでの我慢だ。 私は自分にそう言い聞かせて、ひたすら足を動かすことに集中した。
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