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ニ
「どうも。励まし屋さん早いですね」
聞かなかったことにして、紳士な対応を心掛ける。
「フットワークの軽さがウリですから!」
その場で駆け足を始める女。それにしても早すぎだろ。
「岩崎様、中へ入ってもいいですか?」
柔和な笑みを携え女は言った。構わないが……不用心で心配になる。
客とはいえ、見知らぬ男の部屋に上がり込むことに抵抗ないのか?
「お茶とか出せないけど」
「期待しておりません」
代わりにクッキーでもあげようかと思ったがやめた。
「私、水川涼子と申します。よろしくお願いします」
水川の背後に見える真っ暗な町並みが引き立て役になったのか……幼さを残す愛くるしい顔が、満天の月のように輝いて見えた。
こんなに明るい笑顔を向けられたのはいつ振りだろうか。
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