1/5
前へ
/17ページ
次へ

「どうも。励まし屋さん早いですね」  聞かなかったことにして、紳士な対応を心掛ける。 「フットワークの軽さがウリですから!」  その場で駆け足を始める女。それにしても早すぎだろ。 「岩崎様、中へ入ってもいいですか?」  柔和な笑みを携え女は言った。構わないが……不用心で心配になる。  客とはいえ、見知らぬ男の部屋に上がり込むことに抵抗ないのか? 「お茶とか出せないけど」 「期待しておりません」  代わりにクッキーでもあげようかと思ったがやめた。 「私、水川涼子と申します。よろしくお願いします」  水川の背後に見える真っ暗な町並みが引き立て役になったのか……幼さを残す愛くるしい顔が、満天の月のように輝いて見えた。  こんなに明るい笑顔を向けられたのはいつ振りだろうか。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加