2018年「ミスター・タイムトラベラー」(日本)

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 ドニサンは、苦笑しながら、軽くうなずいたあと、膝の下にまとわりついて「ボンジュール」と挨拶を繰り返す、マコトの娘と紹介された二、三歳の女児の頭を撫ぜながら、無情な時間の流れと、世代が交代しながらも人の歴史が脈々と続いていくことの不思議について感想らしきことを言った。ドニサンの言葉の中で、聞き取れなかった部分はフランス語だったのかもしれない。いつどこでフランス語を覚えたのか、マコトは、ドニサンのフランス語もある程度聞き取れている様子で、日本語以外で、短い受け答えをしていた。心なしか、ドニサンのため息のようなフランス語は、マコトの娘のジョアにも聞き取れているようにも見えた。  平成という時代の最後の正月に再び集まった「家族」は、もう「擬似家族」ではなかったと思う。まだ意味のある言葉を話さない女児を除いて、全員がお互いの気持ちと知っていることを伝え合ったことで、わだかまりや誤解も解けて、本当の家族に近づけたように思えた。マコトは、母親や祖母がそうしたのと同じように片親だけで子供を育てていること、そうなった経緯などの近況をドニサンだけでなく、母親である私にも話してくれた。
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