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今回、マコトがドニサンの来訪を予測して帰省するまで、この十年の間、この子から私に連絡らしい連絡はなかった。ただ、一度だけ、突然かかってきた国際電話で、海外で忙しく仕事をするようになったと聞いたことがある以外は、孫の存在も含めて、詳しいことをほとんど知らなかった。でもこうやってマコトから話を聞いて、マコトにも孫のジョアにも、つらい過去があったことを知った。テーブルに座る三人の大人は、床で一人遊びをするジョアを見た。
「クークー!」
ドニサンが鳩が鳴くような音を出してジョアに声をかけた。さっきは、大人たちの声に応答したのに今度は全く聞こえていないみたいだった。マコトによると、呼びかける方向が悪いらしい。アメリカにいた頃、運悪く、耳から数センチという至近距離で銃声を聞いてしまったらしく、今でも右耳がほとんど聞こえないという。
「なんで、そんなことに・・・」
ルミヱがティッシュで目頭を押さえた。
ジョアは、大人達の視線に気づいて無邪気に笑った。ドニサンは、ジョアを静かに、でも力強く抱きしめた。ジョアは、「ボンジュール」を繰り返した。
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