2036年二月「イー・アイ(E・I)」(パリ)

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2036年二月「イー・アイ(E・I)」(パリ)

TP活動記録 page 026 (Ken)  マティスによってはじめられた架空の文章群の作成作業は、大詰めを迎え、バイオテロ対策室では、あるコンセンサスに達した。これ以降、対策室外への情報の流出を防ぐ目的で、ドニ・マルタンには、エグジレ・イマジネル(架空の亡命者)の意を込めた「イー・アイ(E・I)」という、英語風の発音のコードネームが与えられた。ディエゴは、もっと英語風に読んで、イマジナリー・エグザイル(I・E)と、語順を逆転させた。  時系列がどう狂ったのかわからない。AI(ポアンカレ)がおかしいのか、自然の法則が歪められたのか、理由に関しては結論が出そうにもないが、バイオテロ対策室内では、この「E・I」が2009年12月31日にフランスで生まれて、二十世紀の日本のどこかで日記やメモを大量に混入させた人物という判断は、揺るぎようがない。
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