2017年「パリの中にいない僕の妄想の中のパリ」(ヴィトリ・シュル・セーヌ)  

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 パパは、火星と水星と木星の日、火曜日と水曜日と木曜日は、ロレーヌの森の中で研究をしていて、金曜日の夕方にパリの家(本当はパリの南のセーヌに面している町にある家)に帰ってくる。月曜日の朝に僕と一緒に学校に出掛けて、夜には帰ってきてくれない。週に三日も家族と会えないなんて、パパの仕事は大変だと思う。だから僕は、大人になっても研究者にはならない。だって、パリにずっとは住めないから。  ぼくは、ずっとパリに住んでいると思ってた。メトロに乗って幼稚園(エコール・マテルネル)まで通ってたから。メトロとかトラムがあるのはパリか、ほとんどパリかのどっちかだからエコールは、パリか、ほとんどパリにあったと思う。でも小学校は、家の近くに行くことになった。ここには、幼稚園と違って、英語を話す子はいないし、乱暴な子が多い。頭の良いルカもいないし、いじめっ子から守ってくれる強いエマもサラもクロエもいない。
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