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あたりが暗くなってきた。一時間ほど前に開かれたままのドアのせいか、警報音が鳴り続いている。でもスタッフの姿は見えない。その内に乗客の中から、車外に飛び出る者が、一人、また一人と現れ始めた。全員、危険を承知で、徒歩でキングスクロス駅に向かったようだ。僕たちはもう少しだけ車内にとどまり、状況を見守ることにした。幸い、車内にはトイレもあるし、マルの料理のおかげで空腹でもない。
集団で下車する人々の群れは、街灯に照らされながら線路上に細くて長い行列を作った。あの行列の先端は、既にキングスクロス駅まで届いているだろう。長い行列はその内に途切れ、最後尾にいた人たちも見えなくなった。おそらくこの時点までに乗客の約半数が下車したようだ。無理やり下車して、徒歩で移動した集団の最後尾が見えなくなってから更に三十分が過ぎた頃、とてつもなく大きな地響きと共に大きな爆発音が聞こえた。音が伝わってきた方角から考えてキングスクロス駅の方角だ。車内に残った人々はパニックになった。このまま車内に残り続けるのは危険なのかもしれない。でもここで無理に下車するのはもっと危険にも感じた。
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