2033年1月「幻の国際シンポジウム」(ナンシー、パリ、ロンドン、ハリッジ、ロッテルダム、ブリュッセル、パリ、ナンシー)

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 ナンシーに帰り着いた時、僕たち三人の格好はひどいものだったようだ。マルも、小さなリュックを背負っているだけで、持ってきたはずの食事用のクーラーボックスやポスター用の筒もどこかで手放したようだ。  もう何日も経過したのに、フランスの動画ニュースサイトでは、いまだに先日のロンドンでの事件のことを取り上げている。こんなの不謹慎だと思うけど、深刻な報道の時期はとっくに過ぎ去って、なんでもゴシップにして茶化した報道や情報の垂れ流しが続く。実際に駅周辺の駐車場の防犯カメラには、ある瞬間、大きな謎の白い箱が映り、数秒後の写真には箱が映っていないないのだという。  こうなったら、もう何でもありで、爆発事故前のキングスクロス駅の周辺にUFOが出現したとか、UFOに乗り込む黒い服の宇宙人が目撃されたとかしないとか。さらには、宇宙人はやせた爬虫類型のブロンドで舌が蛇のようにスプリット・タングになっていたなんて見てきたようなジョークとも都市伝説ともつかない怪情報がメディアの中で再生産されている。
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