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すかさず菜美が説明を入れる。
「秋人さんはきっと初対面になると思います。私のお姉さんみたいな方で、フルート奏者なんですよ。一度、皆でアンサンブル出来たらいいなって思っていたんです」
菜美が甘えるような瞳で秋人を見た。
秋人は思わずくすりと微笑んでいた。
彼女の縋るような瞳がどことなく仔犬のように見えたからだ。
「それじゃあ、お邪魔させてもらおうかな。その日なら多分、お昼過ぎ…。そうだな、十三時頃には行くことが出来ると思うけど、それでもいいかな」
「はい、大丈夫です。菜摘さんもそのくらいの時間に来る予定ですから」
菜美が嬉しそうに小さく万歳をする。
「うわぁ、来週の日曜日が楽しみ。待ち遠しいなぁ」
「その日は晩メシも用意しとくよ。菜美が秋人の分は自分が作ると張り切っていたからな」
小暮が可笑しそうに言う。
「もう、先生ったらホントにお喋りなんだから。ね、秋人さん。そう思いませんか」
唇を尖らせた菜美が少しだけ頬を染めた。
菜美の言葉に秋人は目尻を下げて頷いていた。
その後二人は店内を見て廻り、小暮はシネマミュージックのオーケストラCDを、菜美はショパンの楽譜本を購入し、店を出た。
菜美は小暮の腕を引っ張りながら駅へと歩いて行く。
そんな二人の後姿を見ている秋人の瞳はどこまでも優しさを湛えていた。
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