23人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
秋人の繊細でどこまでも柔らかなタッチの音色が部屋中に溢れはじめる。
「ドビュッシーのピアノのためにか…。相変わらず素直な音色だな」と、小暮は呟きながら目を閉じ、演奏に聞き入った。
秋人の演奏が進むにつれ、フォレストの子ども達が開け放された音楽室から流れるピアノの音色を聞きつけて一人、又一人と静かにやって来ていた。
小暮が目を開けると同時に演奏が終わった。
途端、大きな拍手が部屋中に響き渡った。
秋人と小暮が驚き振りかえると、子ども達が沢山集まり、笑顔で手を叩いている。
秋人は軽く御辞儀をして子どもたちに会釈した。
「よぉし。次は私の番だ」
小暮がトランペットを片手に立ち上がると、子ども達から歓声と拍手が沸き起こる。
片手を挙げてそれに応えた小暮がトランペットを颯爽と奏ではじめる。
自由な旋律、そして胸に響く情熱的な音色が響き渡る。
「星に願いを…。おいおい、すごいアレンジだな」
秋人も目を閉じ、トランペットの音色に耳を傾けた。
それからしばらくの間、音楽室はピアノとトランペットの音色に包まれていた。
クラシックだけでなく、小暮の好きなシネマミュージックやジャズなど多彩なジャンルの音が満ち溢れた。
最初のコメントを投稿しよう!