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二人の合奏が終わりを告げると、子ども達は隣室から次々と楽器を取り出してきた。弦楽器はヴァイオリン、ヴィオラにチェロ。木管楽器はフルート、オーボエ、クラリネットにピッコロ。金管楽器はトランペットにホルンにトロンボーン、ユーフォニアム。
その光景を見て秋人は驚いた。
「先生、これは…一体何ですか」
秋人の驚く顔を見て小暮がしてやったりとほくそ笑んだ。
「フォレストのオケ部だ」
「オケ部…って。何時、こんなことを始めたんですか? 楽器はどうしたんですか?」
秋人が驚くのも仕方なかった。
県が運営管理しているこの施設で、これだけの楽器を揃えるのは誰の目から見ても無理があるからだ。
大体にして音楽室があることや、グランドピアノが置いてあること自体が不思議なくらいなのだから。
「まぁ、簡単に言うと寄付して頂いた。始めたのは丁度一年前から。私は木管と金管は多少、教えることが出来るが、ピアノと弦楽器はダメだ。ところが上手い具合にこの子たちの学校で音楽の先生が教えてくれているんだよ」
小暮は簡単な説明だけをして、子どもたちのもとへと鼻歌交じりに歩いて行く。子どもたちと云っても、下は幼稚園児から上は高校生までいる。全員とまではいかないが皆、それぞれにオーケストラに必要とされる楽器を手にしていた。そんな小暮の後姿を秋人は呆けたように見ていた。
「秋人、皆に紹介するぞ。こっちに来てくれ」
小暮の呼ぶ声で秋人は我に返った。
そして小走りに子どもたちの輪の中にいる小暮のもとへと向かった。
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