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「分かった。ありがとう、二人とも」
腰を上げた秋人はゆっくりと屈伸運動をしながら二人に問い掛けた。
「さてと、ここでストレッチして体をほぐしたら第二目標地点の図書館まで走る。で、又ここに戻って来て解散って感じでどうだろう?」
「私はそれで大丈夫です。又、軽く走って自宅に戻ればいいだけですから」
「私もそれでオッケーです。実はここまで自転車で来たんです。自転車を漕ぐのも全身運動になるから、真夏が来る頃にはすっごくいいプロポーションになっているかも」
菜美の返事に場が和む。
三人は笑い合いながら、時間を掛け入念にストレッチをしてから足並みを揃えて走りはじめた。
走りはじめると意外にもペースが速かった。
早朝とはいえ三人並んで走るのは他の通行人に邪魔になるからと、途中、菜摘からの提案で一列で走ることにした。
先頭が言い出しっぺの菜摘。真ん中に菜美を挟んで最後尾を秋人が走っているのだが、菜摘のテンポが結構速い。
真ん中を走る菜美も何食わぬ顔で菜摘についていく。息も切らさず平然とだ。しんがりの秋人はついていくのが精いっぱいという感じだった。
これは小暮先生と同じだ。きっと彼女は持ち前の肺活量で走っている。
木管楽器のフルート奏者も肺活量がある。
もしかして三人の中でいちばん小柄な菜摘がいちばん体力あるのかも……と、秋人は青ざめる。
ぴったりと菜摘について走る菜美は若さ故の体力だ。
まだ十代の現役高校生。授業で体育だってあるだろうし、アルバイトは某大手問屋の倉庫内を走りまくっていると聞いた。知らず知らずに体力が付いているのだろう。三駅先からここまで自転車で来てもケロリとしている。
これは年長者でしかも男の自分がいちばん体力ないのかもと、秋人は再度青ざめた。
梅雨が明けるまでにはこの二人よりは体力付けなければ。
次の目標を決めた秋人は顎を引き、二人に遅れないよう気合を入れ直した。
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