ファーストスター

2/85
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
 子どもの頃からの夢だった女優デビューを果たして三年。  脇役からのこつこつとした努力を重ね、オーディションでやっと掴んだ主演女優の役。  業界内では実力派という評価が付いてきてはいるが、浮き沈みの激しいこの世界。  このチャンスを絶対にモノにするぞと意気込んではいたけれど、今は不安のほうが大きかった。 「監督さんたちには上手く演じて見せますって大見得切っちゃったしなぁ…」  がくりと肩を落とし、姫はまたソファに寝転がろうとした。  そのとき、マガジンラックにある情報誌がふと目に入った。 『プラネタリウムに行こう』  表紙には小さな特集だが、何処かのプラネタリウムの前で夜空を見上げている男女の写真があった。  姫は「これよ! これ!!」と、大きな声を上げながらその本をラックから引き抜き、パラパラとページを捲りはじめた。  …………………………    淡いクリーム色のTシャツにストレートのジーンズ。  そして長い髪をひとつに束ねて三つ編みにし、帽子を目深に被るという極力目立たない出で立ちをした姫は、都心を少しだけ離れた宇宙科学館の前に来ていた。  平日の午後だけあって辺りは閑散としていて人影もまばらだ。 「都心を避けて正解だったな。人混みはうんざりだもの」  気分を良くした姫は鼻歌を口ずさみながら、券売機で入場券とセットになっているプラネタリウムのチケットを買った。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!