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「なんだって? 織幡さんが行方不明?」
真壁は伝言を聞くや否や、ホテルへ脱兎の如く走り出していた。
その背中に向かって七星が声を掛ける。
「装備を持ってくる間に、捜索隊の人選はしておくわ!!」
片手を挙げて応えた真壁の姿は、ホテル付近まで広がってきていた白い霧の中に溶けていった。
「痛っ……。足首、捻ったのかな? 立てないよ……」
ふいにぽろぽろと涙が零れてきた。
ばか、バカ、私のばか!!
どうしてあの時、前を歩く人たちに声を掛けなかったの?
どうしてあの時、ただの霧だからって軽く考えていたの?
サークルの皆があんなに慌てて引き返すってことは、こんなことにならないようにっていうことなんだと分からなかったの?
後悔が胸の中をぐるぐると駆け巡る。
どうしよう。このまま霧が晴れなかったら……。
このまま見つけられなかったら……。
最悪のコトが頭の中に浮かびそうになったが、ブルンと首をふって気持ちを奮い立たせる。
だいじょうぶ。
絶対、大丈夫。
絶対に真壁さんが助けに来てくれる。
泣きたいのを我慢すればするほど涙が溢れ出てきた。
「にゃー……」
すぐ近くで猫の鳴き声が聞こえた。
ふっと足先を見遣ると、先ほどの黒猫が音もなく姫に近づいてきていた。
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