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真壁が危険だからと制したが、望の言い分は一理あることだった。
「僕も去年の夏にガスに撒かれてプチ遭難した経験があります。今夜ほど濃くはなかったから自力で戻れましたが、織幡さんが道に迷ったなら、方向が分からなくなったのなら、僕は思い当たる節があるんです。きっと役に立ちます。連れて行ってください!!」
真壁たちがその意見を聞いて思案していると、七星が望の背中を押した。
「望クン、頼んだわ。北斗とペアになって、姫ちゃんを必ず見つけてきて」
「よっしゃ!! 行ってきます。必ず見つけてきます!!」
七星の一声と、望の気合の入った男気のある掛け声で、助っ人の望を含む六名の捜索隊は坂道を登りはじめたのだった。
一方、姫は黒猫のスピカを頼りにし、猫に一生懸命話し掛けていた。
溺れる者は藁をもつかむと云った感じで……。
足を捻ったのが幸か不幸か、その場を動けずにいた。
スピカがいてくれたのが良かったのかも知れない。
一人だと不安ばかりが先立ち、無理に動いて更に深みに嵌る危険性を回避できていたからだ。
「ねぇ、スピカちゃん。キミのお家はどこなの? ご主人様は誰かな? もし、家に戻るなら誰かを連れてきて欲しいな……」
捻った足を投げ出し、スピカを胸に抱いて親睦を深める。
しかし、当たり前の話だがスピカからはうにゃとか、にゃんとか、にゃぅおーといった返事しか返ってこなかった。
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