雨がやんだら

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 すっかり支度が出来ていたダイニングテーブルに座り、急いで朝食を頬張っていると母が不思議そうに尋ねてきた。 「どうしてそんなに慌てているのよ? 冬休みはなぁんにも予定がないって愚痴っていたくせに。何処かに出掛けるの?」 「ううん、そうじゃなくて。陽菜からちょっとしたメールがきてね、その返信を早くしてあげたいの。陽菜にとって、とっても大事なコトだから」 「あらあら、昨夜の長電話もそのことなのね」  つい口を滑らせ、しまったと思った花梨だったが母からの追及はそれ以上なく、素知らぬ顔で花梨は朝食を食べ終えた。  何たって中学から私立の女子校通い。恋バナとかの話が出たら、母は大乗り気で参加するに違いない。  たまにだけど、花梨はいつ好きな人が出来たとか聞かせてくれるのかしら。ピアノが好きなのはいいことだけどね、そういう話も私はあなたとしたいのよね~と、溜息交じりに言われることがあるからだ。  自分の使った食器を洗い、母にまたあとで降りてくるからと伝え、花梨は自室へと続く階段をゆっくりと登った。  部屋に戻り、ドスンとベッドに腰掛けて放置していたスマホを手に取る。朝食を食べている間、誰からも連絡は入っていなかった。  気を取り直し、青葉からのメールを再読してから陽菜へのメールを花梨は打ち始めた。  ところどころを端折りながらも、青葉さんが純さんに上手く話してくれたよ!! 明日にはダブルデートって感じで集合場所と時間の連絡が来ることになっているからと送信すると、一分も経たないうちに陽菜からの着信音がけたたましく部屋に響いた。  あ、もうメールより話したほうが早いと思ったのだろうと花梨は理解し、素早く電話に出る。陽菜、おはようーと呟くと、陽菜の素っ頓狂な声が耳に届いた。
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