雨がやんだら

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雨がやんだら

 底冷えのする土曜日の午後、花梨のもとへT音大から特待生枠での合格通知が届いた。  ドキドキしながら封書を開け、紙に書かれていた『合格』という文字を見ただけで、嬉しくて嬉しくて心も体もフワフワ舞い上がりそうだった。  ここ何日か、モヤモヤとした憂鬱な日々を過ごして来た花梨だったが、そんな気持ちは何時の間にか何処か遠くに飛び去っていた。  これで予定していた明日の東京フィルハーモニー交響楽団の演奏会には気分は軽やか、(シャープ)な気分で行くことが出来る。  もし不合格だったら(フラット)な気持ちで演奏を聞く羽目になっていただろう。  花梨はそんなことを思いながら、演奏会へ一緒に行くことになっている友人達に『T音大、合格したよ。明日の演奏会の後は皆でパーティしよう!!』とメールを送信した。  しばらくすると次から次へと『おめでとう』といったメールが花梨の携帯へと返信されて来る。  メールの文面を見ながら晴れ晴れとした笑みを浮かべた花梨は、鼻歌交じりで自分の部屋の主といってもいいYAMAHAのアップライトピアノの前に座った。  合格したからといって毎日の練習を欠かすわけにはいかない。  花梨が弾きはじめたピアノから流れる甘い旋律は夕暮れが近付く冬の空へと静かに溶けていった。
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